Text
植森 >> ueki
なんでもセイギにギセイは付きもの、らしい。
例えばの話。もしも、見知らぬ悪人と私が同時に崖の淵に立たされて助け出す為には片方を諦めなければならないとしたら、植木は私を助けに来てくれるだろう。
もしも、そんな風に私と自分自身が天秤にかけられていたとしたら、植木は私を助ける為に身を差し出すのだろう。
では、問題。
もしも、見知らぬ誰かと私が天秤にかけられていたとしたら、植木はどうするのだろうか。
「そんなの、どっちも助けるに決まってるだろ」
質問を真っ向から無視して、それが当然だとでも言うかのように彼は即答する。
私には無謀とも思える彼のその力強さが太陽のように眩しく、尊いものに見えた。だって、彼は本当にやってしまうのだ。どんなに無茶だって、それが誰かの為になるのなら出来てしまうのだ。
……その選択によるしわ寄せで、犠牲を背負うのはいつだって彼自身だというのに。