泣かない君へ

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再会の才 / よろずりんく

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帝春 >> index


学園都市の中は狭い。東京西部の広大な土地を切り出しているとはいえ、第一から第二三の学区に分かれている中で実際に学生が行動する範囲は広くはない。
だから、こんな偶然だって生まれてしまう。

「あっ、あの人……」

ぽつりと呟いた初春の目線の先には、丁度コンビニから出てきたと思われる第一位の姿があった。
白。
そう、その男を形容するならば『白』であろう。特徴的な白髪は目立つ為、視線を引き寄せるのには仕方がないかもしれなかった。
手に提げるビニール袋は所々デコボコとしており、うっすらと透けた暗い色は一方通行が愛してやまない缶コーヒーか。

「……、」
「……、」
「……あいつ、気になるのか」
「あ、はい。命の恩人になる訳ですし」
「……好き、なのか」

垣根のどこかピントのズレた質問に初春は疑問を抱きながら、答える。

「そうですね。あの時のお礼を言いたいです」

しかし言ってから、初春はふと気付いた。垣根が思いの外真剣な眼差しで一方通行が歩いていった方を見ている事を。

「垣根さん?」
「……」
「垣根さん」
「……はぁ」

やがて溜息をつく垣根を不思議そうに見上げる初春。
二人の間で消化された出来事であっても、垣根はずっと気にしているのかもしれない。それとも、自身が第二位であるが故の感情があるのか。初春は最初にそう思ったものだが、どうやら何か少し違うらしい。

「垣根さん」
「いや、なんでもねえ」
「垣根さんもしかして、やきも」
「なんでもねえって言っているだろう」

垣根は顔を背けるようにふいっと他所を向く。だからだろう、初春はある事に気がついた。

「ふふっ」
「なんだよ」
「なんでもありません。ただ、そうですね。かわいいなと思って」
「なっ」

赤く染まった耳と同じように、やんわりと頬が色付いていくのを果たして垣根は自覚出来ただろうか。
初春はいつもやられている仕返しと言わんばかりに微笑んで、先に一歩を踏み出した。