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季節は夏。暑い季節。
照り付ける太陽が容赦なく降り注ぐ。滲む汗。肌で感じる熱。頬が異様に熱い。
ああ。この日ほど、麦わら帽子を忘れた自分を呪った日はない。
暑い。もういっその事、オムすけを呼んで水浴びでもしたい気分だ。
「あれ、イエロー。麦わら帽子はどうした?」
「お家に忘れて来ちゃったんです…」
「そっか…」
かぽりっ。
頭の上に何かが乗せられる感触。そして、突然塞がれた視界。
何が起きてるのか、暗闇の中で分かる筈もなくて、頭の上の何かを取り除こうと頭上に手を伸ばした。
すると…、
(………あれ、これって、)
「レッドさんの、帽子…?」
頭から外してみると、案の定それはレッドさんの赤い帽子だった。
ふと、レッドさんの方へ向いてみると、頭上にある筈のいつものトレードマークが消えている。
「イエローが暑そうにしてたからさ。それでもかぶってると良いよ」
「良いんですか?」
「ああ。イエローの頬、真っ赤だ。よっぽど暑かったんだろ?」
頬が赤かったのは、暑さのせいだけじゃないんですけどね。
なんて口に出せる筈もなく、レッドさんの好意を素直に受け取る事にした。
ぶかぶかで、僕がかぶるにはちょっと大きすぎる帽子。気を取られると、先程みたいに前が見えなくなってしまう。
けど、その度にレッドさんの匂いを感じて、なんだか嬉しい気分を感じさせた。
もっと、もっと、感じていたい……。
「あ。俺、グリーンに会いに行かなきゃならないんだっけ。そろそろ、俺は行くよ」
「あっ、帽子…、」
「良いって。次、会った時に返してくれれば良いから」
レッドさんはそう言うと、別れを告げて行ってしまう。
帰り際に言ってくれた「またな」の言葉。また、レッドさんに会える。レッドさんに会いにいく口実ができた。
その事だけでも、嬉しさが一気に込み上げてきて、夢のようだと思えるのに。頭上にある、僕の為に彼が残してくれたものが、夢じゃない事を示してくれている。
ただでさえ暑いのに、胸がばくばくいって、体温がもっと上昇した気がする。嬉しさで爆発しそうだ。
そして僕は家路につく事にした。太陽の光が暑くても、気温が高くても、僕はもう気にしなかった。
レッドさんが残してくれた温もりがあるから。レッドさんが言ってくれた言葉があるから。
だから、どんな暑さもへっちゃらなんだ。
10.8.19
//お近づきのシルシ