泣かない君へ

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再会の才 / よろずりんく

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新約以降。







病院帰りのその日、上条当麻とインデックスは二人並んで家路を歩いていた。

「大丈夫か?」

もう何度発したか分からない言葉を繰り返す上条は、インデックスの方を向いて不安げに言った。
対するインデックスは、胸に手を当てて困ったように苦笑してから大丈夫だよ、と告げる。それはまるで小さな子供を諭すかのような響きをも含んでいた。
そう、今回病院にお世話になったのは、お医者さんもびっくりする程の病院通い率を誇る常連さんである上条当麻の方、ではない。
珍しくもインデックスの方である。それを示すかのように彼女の胸に当てた右手首の白い布地の下から僅かに覗くのは、これまた白い生地の包帯だった。しかも、実は包帯はここだけではない。修道服に隠れてはいるが、脚にも巻かれている。
どうしてこうなったかと言えば、理由は厄介なようでいて少し単純で、いつものようにトラブルに巻き込まれ、いつものように奔走して、いつものように解決に導いていたらそうなっていた、としか言いようのないものだった。
いつもと違うのは、その脅威が上条に襲ったものではなく、不幸にもインデックスの方に向いた点か。

「痛みはないか?苦しかったらすぐに言えよな?」

ぎこちなくインデックスを伺う上条。
彼が彼女にここまで過保護になるのはある意味仕方のない事かもしれなかった。
インデックスがそこまでの怪我をしたのを見たのが記憶の中で殆どないのもあるだろう。それに加えて、よりにもよって自分がインデックスを巻き込んでしまった。インデックスの助力があれば心強いと、何の考えもなしに軽はずみに彼女が戦場に立つ事を良しとしたのだ。

「……とうま。とうまが気にすることはないんだよ」

インデックスは穏やかにそれでいて優しく笑って、

「誰かを助けたいと思った、その想いは決して間違いなんかじゃないんだから。確かに私はとうまの手助けをして怪我しちゃったけど。でも、そこに後悔なんて微塵もないんだよ」

とうまだって、いつもそうでしょ?と、付け加えてインデックスは言った。
上条は拘泥せずにぐっと、自分を押し込める。流石に自分の普段の行いを出されたら黙る他ない。
何よりぐうの音も出ない言葉だったのだ。
だってインデックスが怪我をした事も、インデックスを守れなかった自分も、許せない事は確かだったけれど、その果てに救えたものがあった事は紛れもない事実で、だからこそ掴み取った結果に後悔なんて出来ない。
だから、こう言うしかなかった。両の手を挙げながら、降参です、と。

「……ったく、インデックスさんには参りました」

敵わないなあと、上条はしみじみ思った。この少女の言葉一つで、嫌でも救われてしまう自分に、上条は気付かされる。
そして、そんな上条の心情を知ってか知らずか、インデックスは嬉しげに笑うと、彼の腕に抱きつく。
上条の腕に柔らかい感触が押し当てられて思わずドキリとする上条だったが、インデックスは特に何も考えていないのか、それともこれくらいなら別にいいと思っているのか気にする事なく続ける。上条もドギマギしながらもやれやれと、一息ついた。

「ねぇ、とうま。今日は思いっきりとうまのおいしいご飯が食べたいかも」
「よし、退院祝いだ。今日は奮発してやるかな」
「楽しみに待っているんだよ」


22.4.16
//いつもと逆の立場にさせてみたら