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「レッドさんっ!!」
反響する彼の名前。
僕が呼んだその一瞬でぴたりと動作を停止させた赤色の背中。
「イエロー、どうして…」
どうして?
それはこちらの台詞ですよ、レッドさん。いつも太陽のようにあたたかくて眩しい笑顔をどうして今見せてくれないんですか。笑顔どころかどうして…、こちらを見向きもしてくれないんですか。
何よりもどうして…、
「僕に黙って行くんですかっ!!」
ブルーさんが慌ただしく僕のもとへ尋ねてきたのはつい先程の事。
息を切らしながら必死に伝えてきた言葉は、レッドさんがカントーから出て行くという信じられないもので。
その言葉を聞いた瞬間、僕の中で何かが崩れ落ちるように頭が真っ白になって一歩も動けなくなった。いつまでも茫然としていた僕を急かすように送り出してくれたのは、同じように伝えに来てくれたグリーンさんだった。あの二人が来てくれなかったら、僕はまだこの事を知らずにのうのうと過ごしていたんだ。
「どうして…」
「君との約束、果たせなかったから。せめて、もっともっと最強を目指したいんだ」
"君"あえてそう言ったのは、幼い頃の僕に向けているからなのだろうか。
遠い遠い幼い頃の記憶。
命の危機に颯爽と現れて僕のヒーローになってくれた彼。純粋な憧れしか抱いていなかったあの時。只、皆のヒーローになってほしくて軽い気持ちで交わした約束。
「嫌…、行かないでください…。レッドさん、僕はそんな事気にしてないから。だから、お願い…」
「………」
「好きなんです。…レッドさんの事。好きなの。だから行かないで…っ!レッドさんレッドさんレッドさんレッドさんっ!!!」
涙でぐちゃぐちゃの顔だったけれど、そんなの気にしていられなかった。今精一杯想いを伝えないと、絶対に後悔してしまう。そんなのは嫌だ!!
(レッドさん。僕は貴方が好きだから、傍に居てほしいんだ……っ)
「……だから、イエローには黙ってたんだ。そんな事言われたら、離れたくなくなっちまうだろ?」
くるりと身を翻したレッドさん。
ようやく、振り向いてくれた…。
滲んだ視界の中でよくは見えないけれど、彼は困ったように眉を下げてやさしく微笑んでいた。
やがて、すっと伸ばされる腕。差し出された手の平が僕の目の前に迫る。
「一緒に行こう」
思わず目を見開いて彼の方を見ると、こちらを見つめながら笑う彼の姿。
…レッドさんは狡いです。
とびっきりの笑顔でそんな事言われたら何も言えなくなっちゃいますよ。
え、僕の答え?そんなの決まっているじゃないですか。
僕は無言のまま彼の手を握り返したんだ。
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テーマは『別れと新たなる旅立ち』
故郷との別れ、二人で共にする旅立ち。
11.10.19
//あの日の約束