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夜。
何故か目が冴えて眠れない。ベッド脇の電気をカチとつけると、明かりで一気に眩しくなる。時計を見るともう12時半を回っていた。
布団から出ると、ローブを脱いで簡単に着替えをすませる。部屋から出て行く為だ。いつもならこんな事はしない。簡単に説明するならば今日は気分が違った。それだけの事だった。
エレベーターに乗りこむ。そこで気がついた。自分は、どこへ行くのだろうか。どこへ行く為にエレベーターに乗っているの?
ただ気分で行動しているだけだった。だから特定の目的は無い。ボタンを押そうと人差し指を硬直していたのもつかの間、不意にエレベーターが動き出した。
自分でも驚いた。……無意識にボタンを押していたのだから。
エレベーター特有の浮遊感がした後、音が鳴って扉が開く。そこへ降り立った。確か、ここは二人が泊まっている部屋がある階だ。
(こんな所に来ても、二人は寝ているというのに……)
しかし、せっかく来てしまったのだから少し歩く事にする。歩いていると、眠くなるかもしれない。それに確かこの階には広間があった筈だ。
廊下を抜けて広間へ赴く。
すると誰かの背中が見えた。ソファに腰掛けているようだ。中先客がいたようで、引き返して帰ろう。そう思っていたら、ふとその先客が見慣れた背中だと気付く。
「パール」
「…あ、お嬢さん?どうして…」
「何となく…じゃ駄目ですか…?」
「駄目、じゃないけどさ…。あ、座れよ」
「えぇ」
私は、丸いテーブルを挟んだ向かい側のソファに座る。パールを真っ直ぐ見れる距離だ。
特に話す事もなくて、沈黙が続く。
本当は、話す事が無かったのではない。話せないのだ。最近、パールと一緒に居ると胸が熱くなる。鼓動がどくんどくんと速くなって、何も言えなくなってしまうのだ。
…静かすぎるこの空間に、堪えきれなかったのだろうか。パールが口を開く。
「…あのさ、お嬢さん」
「………?」
「もし、もしもだぜ?…もしも、俺達が偽物の存在だとしたら、どうする?」
「偽物…?何を言っているのです?」
「……偽物。もし、俺達が本当は居ない筈の存在だとしたら…」
私にはその質問の意味が分からなかった。もし、パールやダイヤが偽物の存在で、居ない筈の存在だとしたら…?
そんなの考えられない。今まで初めて出会った時から、ドタバタで騒がしいお供だった二人。この二人が居なかったら?そんなの…、
「……考えられるわけないです…」
「お嬢、さん……」
「わ、私は……っ」
思わず私がパールに言いかけた、が。それが言葉になる事はなかった。突然、ピピピピピピとどこから音が鳴ったのだ。音の発信源を捜すと、その音は私のポケットからしていたものだった。私のポケットの中に入っているものは、
「ず、図鑑…?」
「俺のも鳴ってるぜ…?って事は」
図鑑の共鳴音。
毎朝毎朝、私達が聞く耳に馴染みのある音。3つの図鑑が揃う時に発っせられる音。そう、3人が揃った時にだけ発生する音なのだ。これが意味するのはたった一つ。
「もう、オイラだけ仲間外れにして」
「ダイヤ!」
「パール探したんだからねぇ」
「すまん、すまん」
「まったく〜」
「…じゃあ、三人でお話しませんか?」
「オイラ賛成〜!」
ダイヤが元気良くソファに座ると、それを見届けたパールが私に近付いて来る。
「ぱ、パール…?」
パールは、小さく呟くように言った。
「さっきのは、忘れていいから」
「………っ!!」
『もしも、俺達が偽物の存在だとしたらどうする?』
さっきのパールの質問。
忘れていいなんて…、放り出すなんて、パールらしくないじゃありませんか。
「ぱ…っ!」
私が名前を呼ぶ前に、パールはダイヤの元へ行ってしまっていた。まるで、今までの事は何もなかったように、ダイヤと一緒に笑っていた。
「お嬢様、どうしたの?」
「あ、いえ……」
私も何事もなかったようにソファに座り、二人と話し始めた。
パール、ダイヤモンド。
二人が偽物の存在でも、居ない筈の存在でも、いつか居なくなってしまう存在だとしても、私は………。
10.3.11
//forgive me, please