泣かない君へ

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再会の才 / よろずりんく

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――暑い。
うららかな陽気を浴びながら、思った事はそれでした。何故でしょう。日差しが強く照りつけているわけじゃないのに、私はいつも以上に流れる嫌な汗に戸惑いを覚えていました。
いつもいつも安心して聞いていられる彼等の声も、今日は耳障りなだけで。思わず頭をおさえる。ズキンズキンと止まない頭痛が、耳に入る全ての音も何もかもを雑音に変換されて、欝陶しく感じているんです。

ああ。これはもしかして―――、

「お嬢様?」

気付けば、漫才の練習をしていた筈の二人が私の目の前に立っていました。その瞳は私の事を心配する瞳。様子のおかしい私を気にかけてくれている優しい瞳。

「…パール、ダイヤモンド」

「どうした?お嬢さん、顔色悪いぞ?」

「私――……」

ぐらり。
気付けば私の体は大きくバランスを崩していて、二人の叫ぶ声を聞きならそのまま意識は薄くなっていった……。


****


次に目覚めた時、そこにはベッドの中でした。
状況を理解するまでに要した30秒。身体が妙に熱を持っていて、とても怠いのです。多分、私は熱で倒れてしまったんでしょうね。倒れてしまうまで、自分で気付けないなんて……。
私が倒れた後に、二人が運んでくれたのでしょう。部屋を見渡すとホテルの一室だという事はすぐに分かりました。

「………」

しんと静まり返る空間。私以外誰もいないのだから当たり前の事です。でも、今日は異常に無機質なものに思えて。誰もいないこの空間が怖くなった。

早く、早く会いたい。
体を起こすと、ずきりとまた頭の痛んだけれど、一人でいる怖さよりはマシなものに思えました。何故か分かりません。でも、凄く不安だったんです。

(私、どうしてこんなにも彼に会いたいのでしょうか――?)

重い身体を引きずりながら、扉に手をかけようとした時、

がちゃり。

唐突に開かれる扉の向こうで、驚いた顔をしながら立っている彼を見た時、私の中に渦巻いていた不安が全て消えていました。安堵したように、そっと胸を撫で下ろした私。それとは反対に彼はちょっと困り顔で、

「お嬢さん、熱があるんだから寝てなきゃ駄目だよ」

「ごめんなさい…」

そして彼が優しい手つきで再び私を寝かせてくれた。
先程は淋しくて淋しくて堪らなかったのに、今では彼と同じ空間にいるだけで怠さ等吹っ飛んだように安心してしまいます。

「今、ダイヤが食べれそうなものをつくってる。ちょっとごめん」

おでこに添えられたパールのてのひら。熱で火照った私にひんやりとした体温で和らげてくれる彼のてのひらは、とても心地がいい。

「まだ熱いな。なぁ、お嬢さん。今度から体調が悪かったらちゃんと言ってくれな?」

「はい…」

離れてしまうてのひらを名残惜しいと思うなんて、熱のせいでしょうか?
もっと、もっとあの手で私に触れてほしいと思ってしまいました。もっとあの手に触れていたい…。

「あの、パール…。手、繋いでも良いですか?」

「え…、どうして?」

「パールのてのひら、冷たいでしょう?」

「そっか…。それでお嬢さんが楽になれるのなら…」

仕方がないな。
ぶっきらぼうに言いながら、差し出すてのひらに彼の手が重なった。
どきんっ。
胸の鼓動が大きく脈打った気がした。何故だかよく分かりません。彼の手に触れた瞬間からドキドキが止まらないのです。速まる鼓動。生まれて初めての経験。
こんな時どうしたら良いのかもよく分からなくて、ただ"何か"をごまかす事しか出来ませんでした。

「パール、冷たいです。ひんやりしてて気持ち良いです」

「お嬢さんは熱いな。…ま、熱があるんだから当たり前か」

「ふふ。そういうパールも熱があるみたいに赤くなってます」

「っ!…き、気のせいだっ」

触れ合う肌から直に伝わる冷たさとは裏腹に、徐々に高まっていく体温。それが熱のせいだけではない事に気付くまであと何秒?


11.5.22
//ゼロセンチメートル