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「パールっ!次はあれ、あれに乗りましょう」
「お嬢さん落ち着いて。遊園地は逃げたりなんかしないよ」
今日はお嬢さんが突然遊園地に行ってみたいと言い出したからデートって事で一緒に来たんだ。
初めて見る、色んな乗り物に興味津々な彼女はキラキラと目を輝かせて。コーヒーカップ、ジェットコースターに観覧車。次々と遊び回る俺達。
さあ、お嬢さん。
次はどれに乗る?
「…パール、あれは何です?」
彼女が指を指した先にあったのは、不気味な紫文字で書かれたホラーハウスという名の建物。俗に言うお化け屋敷と呼ばれるものだった。
「ああ、あれはお化け屋敷だよ」
「お化け、屋敷。こんな場所にお化け屋敷なんてあるのですね。私、いつか行ってみたいと思っていたのです。行きましょう、パール」
そう言って、お嬢さんは俺の手を引きながら中へと潜っていった。
…ここ、目茶苦茶怖い事で有名なスポットなんだけど大丈夫なのか?
中に一歩入ると明るい空間とは別世界の光景が目の前に広がっていた。見渡す限り真っ暗。緑や赤、点々と不気味に光る明かりがなければ足元しか見えない。
「思ったより結構暗いなー」
「………」
「お嬢さん?」
先程まで張り切っていたお嬢さんが今や黙りっ放し。周りをキョロキョロ気にして落ち着かないし、心なしか震えているようにも見える。
ああお嬢さんて、
「もしかして」
「怖くありません」
「…いやまだ何も言ってないんだけど、怖いのか?」
「怖くありませんっ」
「だって動きがぎこちないし」
「怖くありません!しつこいですよ」
頑なに認めようとはしないお嬢さん。
しまいには怒ってぷいっと顔を背けてしまう。しかしその向いた方向が悪かった。彼女のすぐ真横に血濡れたミイラが間近に迫っていたのだから驚いて小さな悲鳴をあげてから俺にしがみついてきたんだ。
「……っ、」
「大丈夫だよ。これ、造り物」
触って確かめてやると安心したのかそっと胸を撫で下ろすお嬢さん。次に、はっと我に返ったお嬢さんは慌てて俺から離れてしまう。そして先程のように聞いてもいないのに怖くありませんと言い切る彼女に俺は苦笑した。
変な所で意地を張るんだよなお嬢さんって。そんな所も可愛いんだけれど。
「お嬢さん、手を繋ごう?」
「パール、私は…!」
「実は俺ちょっと怖いんだ。ここって怖い事で有名だし。な?」
「……わかりました」
パールがそう言うんだったら仕方がないですね。パールの為です。パールの為なんです。そう言ってそっぽを向きながら歩くお嬢さんは何だか嬉しそうで、お化け屋敷の真っ只中だっていうのに俺の顔も綻んでしまっていた。
10.6.26
//素直じゃない君