泣かない君へ

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再会の才 / よろずりんく

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ワタルとの戦いから半年以上の月日が経った。あれから僕はトキワへ帰り、平和な日々を過ごしていました。

レッドさんに、"私"の正体を言う事なく、そのまま……。


朝目が覚めて、カーテンの隙間から差し込む光の暖かさで直感した。今日は最高の天気なのだと。
起き上がり、直ぐさまカーテンを開く。お日様の眩しさが心地良く、体をのばした。

「ん〜、今日は最高のお散歩日和だなぁ」

せっかくお天気なんだし、久しぶりにトキワの森にでも行こうかなと思った時、それと同時にかつて一緒に戦ってくれた人達の事を思い出す。

あれからブルーさんも、グリーンさんも、レッドさんも、皆それぞれの目的の為に旅立ってしまっていた。

そう、あれからというもの、三人とゆっくりと話す機会が殆どないのだ。…帽子の事も、勿論話せていない。
ブルーさんは僕を旅に送り出してくれた人なので勿論知っている。グリーンさんも、勘の良い人だから下手したらバレているだろう。(知らなくても、あまり驚かなさそうだけど)

…一番の問題はレッドさんだ。
レッドさんは僕が旅に出て一番接する時間が短くて僕の正体に気付いていない。

レッドさんとは、戦いが終わってから1回だけ会った事がある。レッドさんが旅から帰ってきた時。
あの時、何度も言おうとした。機会を伺った。…けど言えなかった。僕が本当は女の子だなんて。あの時トキワの森で助けてもらった女の子だなんて、…言えなかった。


(…やっぱ、言わなきゃだめだよね)


僕は散歩しながら、そう考えていた。

「やっぱ、散歩して大正解だったかな!」

風がとても気持ちいい。透き通る風が長い髪を揺らして、太陽が暖かくて、心地良い散歩道。…お散歩して良かったな。

そう思って駆け出した時、突然何かにぶつかり衝撃を受けた。いきなりの事でびっくりしてしまって僕は尻餅をついた状態になってしまった。

「ごめん、大丈夫かっ!?」

(………え、)


僕はこの声を知っていた。
だって、この人は……、


「……レッドさん?」

「えっ、君は……」

その時、はっとした。
僕は、今帽子を持っていなかったのだ。

(…しまった。いつも通りで、今は帽子がないんだ)

バレる、そう思った。
もう、正直に言うしかない。
僕は覚悟を決めた。

「君、は……」

「レッドさん…」



「君は、あの時森で助けてもらった女の子!!」

「……へっ?」

思わずぽかんとしてしまう。
確かに僕は2年前、怪我したレッドさんを助けた。もしかして、僕に気付いていないの…?

恐る恐る立ち上がって、レッドさんを見つめた。久しぶりの姿。嬉しい半面、ちょっと複雑…。

「やっぱり、あの時の女の子だろ!?」

「あ、はい…」

もしかしたら、バレてしまうんじゃないか、もうバレてるんじゃないかと思い、レッドさんの事を直視出来なかった。

「久しぶりだな。元気にしてるか?」

「はい。あの、どうしてレッドさんはトキワに?」

「あぁ、旅から久しぶりに帰ったから、知り合いに顔でも出そうかなって。君は?」

「…ぼ、私は…、トキワの森へ散歩に…」

『僕』と言いそうになったのを飲み込む。トキワの森で助けてもらったのは、『私』だ。レッドさん悟られちゃいけない。

「…そっか。ねぇ、俺もついて行ったらダメかな?」

「えぇっ!?で、でも、知り合いに会いにいくんじゃ、」

「ん、良いんだ。君と話したいから」

それから僕とレッドさんは、一緒にトキワの森へと行った。…多分、知り合いって僕の事だろうなと思い、罪悪感を抱きながら…。


「トキワの森も、大分静かになったな」

「えぇ、これもレッドさんと町の人達のおかげです」

「ははっ、俺は何もしてないさ」

レッドさんは手を帽子に置いて、笑った。そんな微笑みもつかの間、レッドさんの表情は一変し、真剣な表情になっていた。

「…ごめん、な」

「レッドさん…?」

「俺、君と約束したのに。強くなって、ジムリーダーになりに行くって、約束したのに。俺、まだ果たせてない…」

「レッドさん…」

遠い日の約束。レッドさんと僕が交わした約束。ずっと、胸に抱いていた。レッドさんと僕とを繋ぐあの約束。覚えていてくれてたんだ。凄く、嬉しい…!

「ごめん。俺…っ」

レッドさんは悔しそうに顔を歪め、手を握りしめていた。

「レッドさん、大丈夫です」

「え…?」

「私は、いつまでも待っています。貴方が、その約束を覚えていてくれるのなら。いつまでも…」

「……!…ありがとう」


ねぇ、レッドさん。あの約束を覚えていてくれてありがとう。ずっと思っていてくれてありがとう。私は凄く嬉しいです。とても嬉しい。貴方がその約束を胸に抱いてくれるのなら、貴方がその約束を果たそうとしてくれているのなら、私は待ちます。…貴方を信じて。ずっと待ってます。

「レッドさん。私、応援してますから!」

「あぁ、ありがとう。…これで、一線を踏み越える事が出来るかな」

「…え?」

「いや、何でもないよ。そろそろ帰ろう?送ってくからさ」

「はい!」



trajectory


(約束を、果たすから)





手足が痺れながらもジムリ試験を受けるきっかけを妄想。

10.1.24
//trajectory