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シンオウを巡る全ての戦いが終わった後、三人を待っていたのは"別れ"という絶対に避ける事の出来ない三文字だった。
「私達、これでお別れなんですね…」
「別れじゃないよ、お嬢様」
「俺達は、会おうと思えばいつだって会える」
ダイヤモンドとパール、二人を交互に凝視するプラチナ。そう言う二人も悲しそうに表情が曇っている事を感じながら、彼女はおかしそうにそれもそうですねと小さく笑った。
三人が思うのはこれまで歩んできた旅の軌跡。
勘違いから始まったあの日。
彼等は旅のガイドに、
彼女はボディガードに。
互いが互いを勘違いしたまま、色んな事をして、色んな危機を乗り越えて。互いを認め合ったあの日。
苦しくて、キツくて、泣いた事もあったけれど、仲間がいたから乗り越えられる強さを手に入れた。あの日々の出来事を、彼等は一生忘れないだろう。いや、口を揃えてこう言う筈だ。
「忘れろなんて言う方が無理」だと。
「これは別れじゃない。始まりなんだよ。オイラ達にはまだやりたい事が沢山ある。夢もある。そうでしょう?」
彼と彼女の前に差し出した拳。
誰が提案したわけでもない、いつからかやりだしていた彼等の合図だ。
ひとつ。
どこか頼りなさげで細身な腕なのに、しっかりと込められた拳。
拳に秘められた意志の強さを見て、最初は頼りなかった親友の成長を実感した彼。真っ直ぐ向けられた視線に頷き返すと、彼は片腕を前へと差し出す。
「ああ、そうだな。俺とダイヤは、プロの芸人になるっていう夢がある!」
ふたつ。
すらりと伸びる力強い腕に宿る、鋭い意志。
その鋭さ故に最初は戸惑いを覚え、彼とはぶつかり合う事もあった。それでも、何も知らない非力な自分を引っ張り上げてくれたのは彼であり、彼等だ。
既に揃った二つの拳に、彼女もまた沿えるように差し出した。
「私はナナカマド博士や父の後を継ぎたいんです。だから、頑張りますっ」
みっつ。
繊細で白い肌が形作る拳には、光る宝石。
か細いけれど、丁寧に真っ直ぐ伸びた腕を見て彼は微笑む。
自分が知り得ない程の知識は沢山あっても、何も出来なかった彼女。そんな彼女を守ってやりたかった彼。でも彼はもう知っている。今の彼女にもう自分達の手助けなんか必要ないという事を。
ガッ。
「次に会った時は、お互い夢へと前進していると良いよね」
「私、立派な研究者になって、名誉ある賞を取ります」
「それがお嬢さんの目標か?」
「じゃあ、オイラ達はP1制覇だね?」
「競争、ですね。負けません!」
「おっ、やる気だなぁ。よしダイヤ。いや、ダイヤモンド。明日からとっておきのネタを特訓するぞ!」
それぞれの道へ歩みだす。
先程まで曇っていた筈の顔も嘘のように今は晴れやかで。
彼等と彼女、背中合わせの三人。もう振り向きはしなかった。立ち止まらないと決めたんだ。
これは別れじゃない。
新たなる旅立ちの第一歩なんだ。
11.10.19
//夢と旅立ち