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ホワイトデーのお話。
ビタービターチョコレイトの続き。
女が男にチョコレートを贈る、あの忌まわしいバレンタインデー。あれからちょうど一ヶ月がたった。
「……で、何故お前はここに居る?」
その場にどうどうと立っている女に問い掛けた。
一ヶ月前と同じ、そこに居るのが当たり前とでも言うかのような態度でそこに立っているこの女。
これから仕事があるんだが…。
「あら、あたしは言った筈よ。お返しは三倍返しで宜しくってね」
「で、そのお返しとやらを要求しにきたわけか」
「そういうこと」
呆れて何も言えなかった。
これだからバレンタインは嫌なのだ。
女が男に頼んでもいないチョコレートを勝手に贈り、後からそのお返しを要求する。まさに、目の前の女がその典型的な奴だった。
「生憎だが、何も用意してない」
「えー、どういう事よっ!!」
「俺は、苦手なチョコレートをお前がわざわざ作ったっていうから食ったんだ。それで十分だろう」
「……ぁ、食べてくれたんだ。…じゃなーいっ!!」
仕事を片付ける為の作業に取り掛かる。後ろから抗議の声が聞こえたが、無視を決め込む事にした。
「ねぇ、グリーン」
「……」
「グリーンってば」
「……」
「グリーンっ!!」
「……」
「グリちゃんって呼ぶわよ?」
「………」
いちいちうるさいやつだな。
イライラを抑えながら黙々と仕事を続けて数十分。気が付けば、騒がしい声が消えている事に気付いた。帰ったのか?そう思いながら周りを見渡すと、驚く事に、あの女が下を向きながら座りこんでいたのだ。わざわざ体育座りなどして。
「おい」
「……にしてたのに…っ」
「ブルー…?」
「…楽しみにしてたのに…っ、あたしが…馬鹿だったわ……っ」
声を震わせてそうブルーはそう言った。腕を組んで下を向いているので、その顔を伺い知る事は出来ない。本当に残念がっているのか、それとも笑っているのか。
俺は溜息を一つついた後、ブルーに近付き腰を降ろした。あぁ、奴は今、腕の中で笑っているのだろうな。
「……何処へ行きたいんだ?」
「……え?」
ばっ。
ブルーは、伏せていた顔を即座に上げて、聞き返した。
「…だから、何処へ行きたいか聞いているんだ」
「で、でもっ、ジムは……?」
「勿論、仕事は溜まっている。だが、それを投げ出してまでわざわざお前に一日付き合う事が、三倍返しになるとは思わないか?」
それが三倍返しにならないんだとしたら、もう出来る事は無い。
そう付け足して。
「……ううん。それは、あたしにとって三倍じゃないわ。…三倍所なんかじゃない。十倍くらいの価値があるわ!!」
「…交渉成立、だな」
そもそも、これは譲歩なんだがな。
そう口に出そうかと思ったが、ブルーのいつもとは違う、はしゃいだ笑顔を見たらそんな些細な事はどうでもよくなった。
甘い痺れが支配する
(で、何処へ行きたいんだ?)
(タマムシの新しいカフェ!)
title by 確かに恋だった
10.3.14
//甘い痺れが支配する