泣かない君へ

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再会の才 / よろずりんく

Text



「だからなんもしねーで、ボーっとしてたら100年経った」

「スゲ―な。お前」



そんなの嘘だった。


あんな何もない、誰も居ないところで、只ボーっと過ごせるはずも無かった。
本当は皆の事を思って思いすぎて、辛かったんだ。

皆が俺の知らない所で、知らない場所で、知らない時に、生きている。
それだけで寂しかった。苦しかった。
胸が締め付けられる思いだった。

皆、俺の事を覚えていてくれるだけで涙が出るほど嬉しかったケド、同時に悲しい。だって、人間の平均寿命は約80年。100年待ってても俺達はもう会えないのだ。


もう会えないなら、皆が俺の事を忘れていてくれた方がマシだったって何度も思った。きっと皆も俺と同じ気持ちに苛まれている事だろう。そう信じたかった。



…ウールからメガサイトでは時空間の影響を受けず、人間は歳をとらないと聞いてからはもっと寂しさが増した。

皆が死んでも俺は死ねなくて、俺だけ全部そのままって事かよ。
俺はそのまま止まっているのに皆が進んでいく。俺も進んで行きたいのに、足が進まない。
そんな疎外感だった。



そして100年。
異様に長く感じた時間。
やっとこの何も無い所から抜け出せるんだな。
でも、皆は………。




「植木。お前に一つ伝えなければならない事がある」

「──…?」


ウールから衝撃の事実を知った。

繁華界と三界の時間軸の流れが違う。だから、もしかしたら仲間達会えるかも知れないと。


皆に会える?
そう思うと、すごく嬉しかった。


だけどウールはこう付け足したんだ。
本来、別れていた筈の繁華界と人間界を統合したのだ。どう影響が出ているか分からない。

俺は言われているその意味が分からなかった。


「つまり、時空間の流れに異常をきたしている場合もあるという事だ。…その場合は、仲間に会える可能性は、」

「……それでも信じたい。俺が守った世界で生きているアイツ等を信じたいよ」

「そうか、ならば何も言う事はない…」



その時、全ての空間に光が集まる。
眩しくて視界が全て真っ白になっていった。


そして――――――。




「……おかえりなさい」

「ただいま!!」




久しぶりの森の顔。
俺が一番見たかった、会いたかった奴。

ものすごく嬉しくて、ものすごく懐かしくて、変わってないアイツを見て俺は前の俺に戻った感じがした。
そして何事も無かったように俺は笑うと、


ガバッ!!


不意に抱きしめられた。
そういえば、前にもこんな事があった。
102年前の記憶。
俺がアノンと戦って、消えそうになって…。懐かしいなー…。



「馬鹿っ!!何でアンタはそんなに笑えるのよ?100年なのよっ!?」

「森?」


森は泣いていた。
ああ、そういえば昔から森には泣かせてばかりだっけな。


「アンタにとって100年なんでしょ!?頑張ってきたんでしょっ!!少しはっ、…泣いたっていいんじゃない?」

「…っ!」



森は俺の心情を察したのか、意外な事を言った。そういえば俺はあの時から涙を流していなかったのだ。



「……あ、森…。そん、な…」


泣きたくなかった。
今まで散々我慢したのだ。今更、涙など…、泣く事なんて、とうに忘れた筈だ。
久々に会った森には笑顔を見せたくて。
作った笑顔で言葉を探した。


「えっと…。おれ、は、」


しかし、簡単には言葉が見つからない。どうすればいい?何て言えばいい?
言葉が見つからない。
どうこうしてる内に俺の作り笑顔は崩れていき、強張っていくのが分かった。
そして忘れていた筈の涙が、生暖かく伝っていくのを感じた。


「…あ、あぁ。森…っ!!」


俺はリミッターを一気に外したように泣いた。男が女になだめられるなんてカッコ悪いけど、俺にとっては100年ぶりの涙。止まらない。
滝のようにボロボロ落ちる。


「植木のことだから、自分より皆の方が辛い思いをしていると思って泣かなかったんでしょ?」

「…っ。俺っ、俺…寂しかった。悲しかったっ!もう…皆に会えないかと思ってっ…。っ!」

「…誰より辛かったのは植木なんだよね。だから…、今日は思いっきり泣いてもいいんだよ」

「森ぃ……森ぃっ!!!」




「うわあぁあぁぁあ!!!」




俺は今までに無い程、泣き叫んだんだ。






「でも、本当によかった。また植木に会えて」

「あぁ!俺もまた皆に会えてよかった!!!」

「ぶっちゃけ、俺達ビックリしたよ。植木の幽霊が出たんじゃないかと思ってな」

「ハイジっちと佐野っちがベンチに隠れてたよねー」

「うっせぇ!あれはだなぁ……」

「あはは…!」


(そして森、大切なお前とまた会えて良かった―――)


09.11.08
//百年分の涙