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「…レッドさん、」
「ん?」
「貴方は、運命を信じますか?」
彼女が妙に真剣な顔つきでそう俺に聞いてきた。
『運命』響きも意味も硬っくるしいと思われるこの言葉。何を言いたいんだろうか。その言葉の真意がわからなくて、逆に聞き返した。
「突然どうしたんだ?」
「…ふと、思っただけです」
戸惑った俺を見て、彼女はしゅんと視線をそらした。自分が迷惑だと思ったかな。彼女はとにかく相手に気を使うから。落ち込ませたくなくて、言葉を濁す。
「んー、どうだろうなー…」
「じゃ、じゃあ、赤い糸は?」
『赤い糸』…ドラマとかによくある、運命で結ばれてる恋人は小指に赤い糸がついてる、だっけ…?
運命という重い響きからポップな響きに変わったものだから、思わず苦笑いしてしまう。
「やけに、乙女チックだな」
「だって乙女ですから!」
自慢気に帽子を取ってみせるイエロー。
さらりと揺れ落ちたポニーテール。少し頬を染めながら笑うイエローを見て、自分もつられて微笑んでしまう。
「…イエローは信じるの?」
「はい!僕は信じてます。この世に定められた運命があるって事」
「定められた運命か…」
「だって、もしかしたら僕達の今は、無かったかもしれないんです」
「どういう事?」
「だって、もしレッドさんが最初、旅に出てなかったら、…ロケット団を倒してなかったら、トキワの森の静けさは無かったし、カントーの平和も脅かされ続けていました」
その言い方だと、俺が世界を救ったみたいで照れ臭くなってしまうじゃないか!
「だったら、イエローがワタルを退けなかったら、人間が消滅してたな」
「その前にも、幼い頃、僕が森に行かなかったら。レッドさんが助けに来てくれなかったら。いくつもの奇跡のよう偶然が重なって、今があるんです。…それを運命だとは思いませんか?」
偶然が重なって今がある。偶然は偶然でしかない筈だ。でも、偶然が重ねって起こる確率は奇跡に近い。そんな奇跡が起きるなら、それは運命であって偶然ではなく、必然だって言いたいのか…?
「赤い糸もそうだと?」
「ええ。運命があるのなら、この指の先から繋がっている赤い糸の先を信じたいです」
「ふーん。でも、俺は運命なんか信じたくないな」
「…どうして、ですか?」
「運命って、縛られてるみたいだろ。まるで、神が定めてるみたいに。嫌なんだ。今、ここに居るのは俺の意思だからさ」
俺がここに居るのは、俺の意志だ。運命って奴が本当にあるのか分からないし、否定も出来ない。だけど、俺はここに居て、彼女もここに居る。今、話してる。それが運命なら、俺達の意志はどこにある?
「レッドさん…」
「赤い糸だって、只繋がる人を待つだけなのか?違うだろ。赤い糸は繋ぐものなんだぜ」
恋愛だって同じ。俺の意志で一緒に居るんだ。運命だからといって待っていたって、何も変わりやしないんだ。
「…だから、イエロー」
無意味な運命理論
(俺はお前が好きだよ)
(…僕もです)
少年漫画的な思考のレッドと少女漫画的な思考のイエロー。
どちらでも想いは一緒でした。
10.2.10
//無意味な運命理論