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小さな声をあげて、彼女は泣いていた。手で顔を伏せ、声をあげる度に肩を震わせて。
そんな彼女を、抱きしめる事も、声をかける事も出来ない。ただ見ている事しか出来ない自分。そんな状況に困り果てていた。
原因は自分にある。自分のせいで彼女が泣いている。それは分かっている。そこで勘違いしないでほしいのは、原因は自分にあるのだが、俺が直接彼女に何かしたというわけではないという事だ。俺が彼女に手を出すものか。それは誓って言える。
しかし、自分に原因がある事は事実だ。直接ではないが、俺が彼女を傷付けてしまっている。現に彼女は涙を流し続けているのだ。俺が声をかけても無駄。只泣きじゃくるだけで、止む事はない。
多分、こうして彼女は必死に訴えているのだと思う。
これ以上、傷付かないでと――――。
こうして泣き出す前、彼女に言われた言葉を思い浮かべる。どうして自分から傷付こうとするの、と彼女はぽつりともらした。
どうしてと言われても、こういう性格だからとしか言えない。言いようがない。
俺だって、傷付くのは嫌だ。痛いし、目茶苦茶辛いし、きつい。ケド、皆がいるから、彼女がいるから、自分は強くなれる。痛さだって吹き飛ぶし、辛さなんて忘れられる。皆を守れる事がとても嬉しい事で、皆が無事でいてくれる事にとても安心する。
これは自分の信念であり、正義だ。どうしても譲れない。仲間にだって譲るつもりはないし、直すつもりもない。これが俺だから。俺が俺でいるための証明。
曲げる事はない。俺はこれからも彼女を守り続けるし、傷付いていく。彼女の訴えとは真逆の行動をし続けるだろう。
だからこそ、彼女を見ている事しか出来ないのだ。ここで彼女を慰めたとしても、後から余計に傷付くだけだろうし。第一、彼女はどんなに優しい言葉をかけても納得しないだろう。俺が信念を曲げない限りは。
彼女は泣き続ける。俺がそこにいても何もしてやれない。彼女の心の傷を治してやれない。逆に自分がこの場にいる事で、彼女は泣き続けるんだろうな。こんな俺の為に。
だからと言って、放っておくわけにはいかない。放っておけない。
なんて、自分勝手なのだろう。自分のせいなのに、自分が彼女を苦しませているというのに、傍にいたいと思ってしまうんだ。それは、傷をえぐるに等しい行為だというのに。
もう一度言おう。俺は信念を曲げるつもりはない。
…でも、彼女には笑っていてほしい。だからこそ、俺は彼女にこう言うんだ。言うしかないんだ。
「ごめん」―――――。
彼女の訴える小さな声が、悲しみが、一層強くなった気がした。それでも俺は、そんな彼女を只黙って見ている事しかできないのだ。
10.4.25
//心に傷を、胸に決意を。