泣かない君へ

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再会の才 / よろずりんく

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植←森








『オレのコト、覚えててくれ!』
『行ってこい、バカ!!!』

そして彼女の記憶は消えた――。


「あ、あれ。私…」

ぽつんと佇む少女が一人。
そんな彼女が最初に思った事といえば、"どうして自分がこんな場所で突っ立ていたのか"だった。
誰かと話していたという微かな記憶はあるのだが、肝心の誰かというまでは覚えていない。おまけに頬には涙を流した跡がくっきり残っている。身に覚えのない数々の痕跡。誰かと会っていた筈なのに、霧がかかったように薄く途切れた記憶。

(なんだか気持ち悪い…)

彼女は思い出したように右手を見遣る。ぎゅっと力強く込められた拳。その中で握られた一つのモノ。何を思ってこんなにも力強く握りしめていたのかも、どこでこんな物を手に入れたのかも、忘却の彼方へ記憶を失ってしまった彼女が知る術はなかった。

「だけど、なんで……っ」

(何で、なんで…。こんなにも変な気持ちになるの?)

悲しみと、怒りと、悔しさと、切なさ。様々な気持ちが入り交じったような、今の彼女には言い表せない不思議な感情。

「こんなもの……!」

こんな物があるから妙な気持ちになるのだ。そう結論付けた彼女は、衝動的に腕を振り上げる。

「………っ」

しかし、それが振り下ろされる事はなかった。否、出来ないのだ。
得体の知れない、だけど彼女の中に確かに存在する気持ち。それがあと一歩の所で彼女自身を踏み止まらせていた。

(出来ない…。自分でも、何でか理解できないけれど、どうしても出来ない…!)

固く結ばれた手の平をゆっくりとひろげていくと、現れたのは一つのお守り。所々が傷付いて、ボロボロにされているそれは大切に使い込まれてきた証。
大切な者との記憶(キューブ)を失う前まで、自身がとても大切にしていた彼がくれた物。だが今の彼女には、それがどんな想いが込められていたのかまでは分からない、
筈だった。

ぴちゃり。
握られたお守りに零れ落ちた雫。
突然沸き上がる理解の出来ない感情が、彼女を襲っていた。

「分からない…。なんで、こんな物を持っているのかも、何でこんな気持ちになるのかも、何で涙が出てくるのかも、分からない。……分からないよっ!!」

わからない、わからない筈なのに。
…何故か知っているんだ。これは自分にとって大切な物で、決して捨ててはいけない物。あの人に貰った時、凄く嬉しくていつまでも大切にしようと誓ったコト。
あの人…?あの人って誰?
私をこんな気持ちにさせるのは誰?ねぇ、どこの誰よ?ねぇ、ねぇ、ねぇ!?一体誰なのよ!?教えてよ!!!

声にもならない悲痛な叫びは、誰にも届かない。
力が抜けた様に座り込む彼女。
その背後には忍び寄る黒い影が、音を立てず間近に迫っているのに彼女は気付かない。
やがて、黒い影が彼女の全てを覆った時もう既に遅く、

「おい、貴様そこで何をしている?」

「……えっ?!」

その出会いが、彼等の運命を大きく変える事を、この少女はまだ知らない。





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テーマは『別れと新たなる旅立ち』

プラスが一番最初に森と出会った時に、森に対して貴様と呼んでいたら萌える。


11.10.19
//涙の理由