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あんたの才は私が守るなんて大見えを切ったけれど、結局はあいつの自由奔放な行動を見逃して、守れなくて、目の前で一瞬にして才が減っていくのを見届ける事しか出来なくて。バトルには盾にすらなってあげられない。ただ見てるだけの足手まとい。
ねぇ、うえき。
私ってあんたの隣に居て良いのかな?
「森ー、無事か?」
ぱたぱたと遠くから駆け寄って来るのは、たった今能力者とのバトルを終えてきた植木だった。
植木は力を無くしたように地べたに座り込む森へ駆け寄ると、彼女の俯きがちな顔を覗き込んだが直ぐにそらされてしまう。
流石の彼もそれにはちょっと傷付いたようで、まるで叱られた仔犬のようにしゅんと落ち込んだ。
「森……?」
「……植木が守ってくれたから、私は大丈夫よ」
そう言って森は笑ったが視線は変わらず彼からそらしたままだ。どことなく覇気のない声が植木の心配を増長させる。
いつもだったなら、強気で受け答えする筈なのに。
普段は持ち前の空気の読めなさに呆れられている植木でもこれだけは分かった。今の森は無理して笑っているようだと。
「もしかして、あいつに言われた事を気にしてんのか?」
「……っ」
びくん、森の身体が跳ねる。
森は問いに答える事はしなかったものの、植木はそれを肯定と受け取ったらしい。
使えない頭で考え何となくを理解した植木は、森と視線を合わせるように自らも冷たい地べたに座り込む。
「植木、わたし……」
「うん」
「……私、あんたの隣に居て良いのかな?」
植木は分かっていた。
森がここまで落ち込む事になった原因。それは、ある能力者の言葉だ。
その能力者と出くわしてしまった植木達は、毎度のお約束のようにバトルを開始する。
植木が前で戦い、森は一歩下がり様子を伺う。時々思わぬ方向に飛んでいく攻撃から植木は森を守ってやる。二人の間では慣れたように当たり前のやり取りだったが、能力者の目には奇異に映ったに違いない。何故なら、能力者同士の戦いに一般人が関わろうとするなど正気の沙汰とは思えないからだ。力のある男ならいざ知らず、森はか弱い普通の女の子。才を減らさない為の脅しの盾には使えるかもしれないが所詮それだけ。危険が付き纏う事には変わらない。もし人質に取られたら、植木は一気に不利な状況へと落とされる。森がその場に留まる事は、双方にとってデメリットでしかない筈なのだ。
『ねー、アンタって何?能力者に付き添って、戦いになったら隠れて、攻撃に巻き込まれそうになったらアイツに守って貰って、余計な傷を作らせてさ。居る意味あんの?邪魔なだけじゃん?』
『……っ!!』
能力者のその言葉が、森の胸に深く突き刺さった事は言うまでもない。何より否定出来なかった。それは今まで自身が感じてきた無力感を第三者が言葉に出しただけだったのだから。
糸が切れた操り人形のように力なく崩れ落ちて、分かりきった答えを口に出せぬまま苛まれる。
(その通りだ。私、なんでここに居るんだろう。植木が放っておけなくて、消滅を防ぎたくて。でも、私のせいで植木が傷付いていたら世話ないじゃない――!!)
言うまでもなく、植木は能力者に勝利しバトルは終わりを告げた。
「俺、森が見守ってくれるから一層頑張ろうって思えるんだ。森が頑張れって言ってくれるから力が沸いてくるし、森が俺の名を呼んでくれるから苦しい時に立ち上がれる」
「植木……」
「本当は俺の傍にいない方が良いって、森には巻き込まれてほしくないって思ってたんだ。ケド、すまん。俺は森に居てほしい」
(なんでアンタが謝るの。アンタは負けられないのに。邪魔だからと遠ざければ良いのに。アンタはばかよ)
森は知っている。いつもはぼーっとして何を考えているのか分からないが、こういう時植木は嘘を付かない。思った事を思ったように喋ってくれる。だからこそ、それが植木の本心なのだと素直に信じる事が出来た。
(私、居て良いんだよね……?)
植木はゆっくり立ち上がると、森の目の前に手を差し出した。それはまるで、一緒に行こうと植木の意志を体現しているようかのように見えて。
「ありがと」
「おう!」
笑顔を見せ合いながら森は思う。
これだからこの男には心から消えてほしくないと願っているのだ。
森に危害が及ぶと怒る癖に森が付いて行く事を止めなかったのは、植木自身も付いてもらう事を望んでいたからだと俺得。
能力者は原作であまり出なかったように思える金髪でまぁまぁ爽やかタイプのチャラ男イメージ。
12.3.23
//いたい、いてほしい