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植森前提の植←ミリ
羊飼いさんは、いつも話してくれる。
前居た世界、人間界の事を――。
「でさ、そこでヒデヨシが出てきて、そうなったらもう大変で…、」
羊飼いさんのお話しは楽しい。
人間界の理や羊飼いさん自身の周りの事を教えてくれたり、楽しい出来事を語ってくれる。あまりにも沢山話してくれるので、羊飼いさんの周りの友達の事を覚えてしまったくらいだ。
騙したりするのが得意なヒデヨシさん。頭の回転が早い関西人の佐野さん。ハーフで物静かな鈴子さん。それと、羊飼いさんの同級生である森さん。
この人達を語る羊飼いさんの顔はとても嬉しそうで、その感情が弾む言葉によって直に私にも伝わってくる。だから羊飼いさんの話しは面白いのだ。今ではお話を聞きたいと私からお願いするくらいに。
「そしたら、森が、も、りが…」
「羊飼い、さん……?」
「森が…もりが……っ、」
今まで楽しそうに話していた羊飼いさんが、突然言葉を詰まらせた。目には涙を溜めて、何かをこらえるように堪えていた。この状態になるのはこれが初めてではなかった。
…時々、羊飼いさんがこんな状態に陥る時がある。お話しを聞く時は勿論、朝起きた時や何でもない時だって。
店長さんが言ってた。自分の世界の事を思い出して、淋しくなっているんだろうって。
「羊飼いさん」
「ごめん、ミリー…」
「大丈夫です。また今度続きをお願いしますね」
少しでも安心できるように私が微笑みを向けると、羊飼いさんも一緒に微笑んでくれた。
私には羊飼いさんの淋しさや悲しさは分からないし、埋めてあげる事も出来ないけれど。少しでも羊飼いさんが元気になってくれれば良いなって、そう思ったんだ。
title by 確かに恋だった
10.4.21
//泣かないで王子様