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あやクル←←←アミティ。
魔物→→→女神。
病みアミティと女神依存症なあやクルでバッドエンド風味。
「あたしね、自信ないんだ」
「ほう、何がだ?」
「キミに好かれてるっていう自信だよ」
「何を言うかと思えば。私がどれだけお前を愛しているのか知らないわけではあるまい?」
「……うん、そうだね」
「嗚呼、我が愛しの女神。お前はいつの日も美しい」
いつだって彼は、そう言いながらとても嬉しそうに微笑みを浮かべ、優しい目をしてあたしに触れてくれる。でも、いつだってあたしをちゃんとした名前で呼んでくれる事はなかった。女神、女神って。あたしはそんなの知らないのに、彼はひたすらあたしじゃない誰かに向けて愛を囁き、思い出を語った。
その度に思った。彼にとってあたしは、彼の思い浮かべる最愛の人の代わりでしかなくて。あたしをアミティとしては見ていないんだ。
その度に胸がちくちく痛んだ。あたしを見て、あたしを見てって、繰り返し繰り返しシグナルを発してみるけれど、彼は気付いてくれない。
多分、違う。きっと彼は気付こうともしていないんだ。最愛の人と重ねている部分以外はいらないから。アミティとしてのあたしはいらないから。
いつかはあたし自身を見てくれる日が来れば良いな、なんて淡い恋心を抱いた時もあったの。でも今ではそんな物、どこかに置いて忘れて来ちゃったみたい。仕方がないよ、必死になって背中を追いかけて行くのが疲れちゃったんだもん。
辛い。痛い。苦しい。もうこんな思いをするのは面倒臭くなっちゃったの。
だからね、決めたよ。
追う側から追われる側へ立とうって。
「女神、好きだ。愛している」
「……」
「女神?」
絶対に好き、なんか言わない。
返さない。応えない。
最愛の人としてのあたしからは何も言ってやらない。自分だけ独りよがりで得た幸せに浸ろうなんて狡いよ。
「あたしは君の事が嫌い」
「め、が、み。何を言って」
「嫌い、嫌い、大嫌いっ」
(あたしを見て、なんてもう言わない)
「女神、私は……」
(ただ、追ってきて)
「ずっと君の事が嫌いだったの」
(逃げるあたしを追ってきてよ)
「嘘、だろう?めが」
「―――……っ!!」
「大嫌いッ!!!」
「女神、好きだ。愛している。こっちを見てくれ。私を見てくれ。女神よ、何故私と目を合わせようとしない。何故振り向いてくれないのだ。お前がいないと私には何も残らない。女神、頼む。また昔のように私に愛していると言ってくれ。また昔のように私に微笑みを見せてくれ、……女神!!」
「……」
「我が、愛しい女神……っ」
無理矢理あたしを振り向かせたって無駄だよ。縋っても餌はもうあげない。
君だけに甘い夢は見させない。
そうやって届かない愛をずっと囁き続けていれば良い。報われない愛にずっと焦がれてしまえば良い。
あたしはそれを見ながら笑っててあげるよ。
「……っ」
なんでこんなに空虚な気持ちになるんだろう。
……ううん、本当は知ってる癖に。報われない愛にいつまでも焦がれているのは、きっとあたしだ。
12.2.4
//流れる涙とひきかえに得たものは