Text
幼女イエローと11歳レッド。
「……ん、」
暗い中、閉じた瞼の向こう側に光を感じる。そっと瞳を開いていくと、徐々に光が差し込み眩しくさせた。完全に開いた先に見えたのは、白い天井だった。
今、俺はベッドの上で寝かされているようだ。
(あ、れ。…俺、トキワジムで…)
確かサカキと戦った筈だ。
ロケット団の首領サカキは俺が仲間になる事を要求し、俺はポケモンを利用する奴が許せないから戦った。想像を絶する苛酷な戦いで、ピカの電撃に最後を賭けて、俺はサカキに勝った筈なのだ。…だが、それからの記憶がない。
(あれからどうなったんだ…?)
「あ、気がついた…?」
横目に声がした方を向くと、ベッドに寝込む俺を心配そうに覗き込む少女がいた。黄色い髪の幼い少女。俺はこの女の子を知っている。ジムに挑戦しに行く前、森で俺が助けた少女だ。
「……」
「森の入口で倒れているんだもの。驚いちゃった」
体を起こすと、包帯がぐるぐる巻いてある腹部がズキリと少々痛むものの、他の怪我は完治しているようで、大分楽に動けた。
「今度は、俺の方が助けられちゃったみたいだな」
「ふふっ」
少女は小さく笑う。彼女の腕の中に居たピカも、安心したように俺を見つめていた。そんな二人に綻んだ俺は側に置いてあった着替えを着て、ゆっくりと立ち上がった。
「……ぁ」
「さて、もう行かなきゃ」
「あ、あのねっ、ジムは凄い戦いがって壊れちゃったんだって。…この街の人、強いトレーナーが居ないの。だから…」
「……?」
「だから、その…。新しいリーダーが欲しいなぁ、なんて」
まさか、俺が?
そう聞くと、少女は静かに頷いた。
最強のトレーナーを目指していた俺がジムリーダーになって欲しい。そう言われた事がとても嬉しくて、今すぐにでもOKと言いたかった。
だが、俺はまだ最強じゃない。
自分が目指している最強にまだ到達しきってないんだ。だから…、
「ごめん」
「……!」
「俺、最強を目指したいんだ。誰にも負けないくらい強くなりたい。最強を目指す為には誰からも勝たなきゃいけない。だから、俺はポケモンリーグに出るんだ。ジムリーダーになる話、その後でも良いかな…?」
「はい…!」
そう言って笑った少女の頭を静かに撫でてやる。ピカが勢い良く少女の腕から飛び出し、俺の足元へ着地した。腰にホルダーを装着して、準備は万端。…さぁ、出発だ!
「待って!」
「…どうした?」
「お願い。いつか、絶対ここへ帰って来てね」
「うん、絶対に帰って来るよ。最強になって、君の元へ」
「約束よ、お兄ちゃん!」
少女が後ろで見送ってくれる中、俺は走り出した。目指すはセキエイ高原。そこにはきっとグリーンも居る筈だ。
ジムリーダーになる為、いつかあの子の元へ帰る為に俺は最強を目指す。
待っててくれ、
必ずここに戻ってくるから!
title by 確かに恋だった
10.4.14
//笑顔に託した想い