泣かない君へ

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再会の才 / よろずりんく

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アルカ時代の魔物×女神(アミティの前世)
身分差萌え。
もうぷよぷよ関係ないよねって感じのものです注意。
直接の描写はないものの、(物理的な意味で)痛い。


















貴方は自身を醜いと言って拒絶する。あたしは貴方の綺麗な心を知っているのに。貴方の優しい微笑みを知っている。掃除好きで屋敷に汚れがない事を得意げに話す彼の無邪気さを知っている。面白そうなものを見つけた時の純粋な子供のように、瞳をきらきら輝かせながら楽しそうに本を読む貴方を知っている。貴方の微笑みが、言葉が、体温が、その全てがとても暖かい事を知っている。
貴方はあたしを違う世界に住む者だからと言って拒絶する。あたしと貴方は同じ場所に立っているというのに。忘れないで、貴方はここに居て良いんだという事。居ちゃいけない存在なんていないんだという事、誰にも忘れてほしくない。あたしは立場を越えて笑いあったあの日を絶対に忘れない。

(邪悪な魔物でしかない私と、女神であるお前。私とお前は違う――)

貴方が自分とあたしとでは見ている世界が違うからと言って拒絶をするなら、あたしは。






とめどなく溢れるものが、あたしを汚す。あたしだって生きているもの、だからこれは何ら不自然な事じゃないし、痛みを伴うのも当たり前の事だ。流れるものと一緒に失われていくあたしの生命。正直言うとね、凄く苦しい。本当は力を使えば痛みは消せるんだけど、あたしは決してしなかった。彼だって傷付けば血を流し痛みも感じるはずだから。彼と同じ世界を見る為に、あたしは彼と同じになりたい。だから紅い印を付けようと思ったの。それでやっと分かったんだ、これが痛みというものなんだね。こんな痛みを、彼は身体にも心にもずっと受けてきたんだね。彼と同じあか、あたしの好きな色。もっと彼と同じになる為に、もっと彼を知る為に、もっと、もっと紅い印を。これじゃあまだ足りない。

指先、手、手首、腕、足、足首、脹ら脛、太股、お腹、脇、胸、鎖骨、肩、頬、

「やめろっ!!」

「っ!!」

突如、今まで見た事もないような険しい形相をした彼が、あたしの手をはたいた。あたしは呆然と、はたかれた衝撃で握っていた筈のナイフが落ちていき、がらがらがらと小さな音をたてて遠くに滑っていくのを見つめていた。彼はそんなあたしの頬を掴み、無理矢理振り向かせる。彼は今にも泣きそうな顔をしていた。

「心配しないで。あたしなら……平気だよ……。でも、痕残っちゃうかもね……。あはは、あたし、神なのにね。こんな姿を人々に見られたら、きっと怖がられちゃうね……」

「痕などお前の力でいくらでも治せるだろう。それよりも何故だ。何故、このような真似をした!!」

「痕は、消さない、よ。証、だから……」

「私の問いに答えろ」

「貴方と一緒の世界を見たかったから……かな」

「なっ」

怖い、気持ち悪い、汚い、近寄るな、化け物。
怖がられて拒絶されるのは辛い事。貴方はずっと独りで堪えてきたんだよね。辛いよね。苦しかったよね。でもね、苦しい事も、時には一人で耐えられない事も、二人でなら全部分け合えるよ。辛さを分け合えば二分の一に。幸せを分け合えば二倍になる。貴方が見ている世界が違うからと言ってあたしを突き放すのなら、あたしが貴方の見ている世界に行くの。

「あたしは貴方が好きだよ」

「私は……」

(……ぁ)

流石にちょっとやりすぎちゃったかな。なんだか不思議な浮遊感がする。頭がふわふわしてぼーっとすると思ったら途端に膝の力が抜けてガクガクして立てなくなって、あたしは咄嗟に支えてくれた彼の腕の中でまどろみながら、心地よく聞こえた優しい声に微笑んだ。


13.3.6
//君のためのアリア