泣かない君へ

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再会の才 / よろずりんく

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レイエに1番近い者からの視点です。
レッドが若干腹黒。




「今頃、アイツ何してんだろうな…」

自分に向かってそう言った主人を見て、心底呆れた。溜息をつくくらいに。
そんなに気になるならば、こうして家に閉じこもってないで会いに行けばいいのにと思ったが、あえて口には出さない。言葉にした所で、主人に伝える事は出来ないからだ。


主人はよくこう言って、あの子の話しをする。一時期でも自分のおやになってくれた、もう一人の主人の事を。

ある時は何をしているのかと呟いたり、ある時はあの子との思い出を聞かされたり。
それはもう、うんざりするくらいに繰り返されたもので、今では受け流しながら聞くのが自分の中での定番となっている。(といっても、いい加減に受け流している事を、主人が計り知る事は出来ないのだが)

「……でも、イエローって純粋すぎるんだよな」

また始まった。主人による、所謂のろけってやつが。
だが、遠くで耳を傾けながら聞いていて、呆れながらも主人の言う事に一理あるなと思った事も事実だ。
この通り、主人はあの子にベタ惚れである。そして恐らく、いや恐らくでなくても、あの子は主人の事を好いている。それも、恋愛対象として。
ならば両想いで何も気にする事はないじゃないかと思う所だが、それは断じて違う。
あの子は内気な性格で、幼い。主人が彼女に優しくすれば顔を真っ赤に染めるし、主人が甘い言葉を囁けば、あの子は恥ずかしさから顔を背けてしまう。
主人はそんなあの子の想いに気付いているし、気付かない方がおかしいくらいなのだ。しかし、主人はあの子に想いを告げる事はしない。

何故?
主人はこの状況を楽しんでいるように見える。あの子に想われ、追いかけられる事で独占欲が一定に満たされているのだろう。想われる自信もあってか、主人はあの子を好いている者達に嫉妬は抱くが、酷く余裕な姿勢を保っていた。


「なぁ、ピカ?」


同意を求めて自分へと話しを向けた主人。ここで無視をすると、後々が面倒なので適当に返事をしておく。どうせ主人に自分達の言葉が伝わる筈がないのだし。

あぁ、早くくっつけば良いのに。
そうすれば長々とのろけを聞かずにすむし、主人とあの子は共に幸せでいられる。自分も愛する恋人とずっと一緒にいられるし、正に一石三鳥ではないか?
だが、どうすれば良いというのだ?主人はまだ想いを伝える気はなさそうだし、あの子はあの子で、主人が自分を想ってくれているとは気付いていないだろう。

そう、ならば気付かせれば良いのだ。あの子に、主人が抱いている気持ちを。

どうやって?
そこまで考えて行き詰まってしまう。自分は人間じゃない。主人に従う、ちっぽけな存在なのだ。そんな自分が、どうやって二人をくっつけさせるというのか。

溜息をまた一つついて、ふと窓の外が目に入った。真っ青な空、差し込む太陽の光、吹き抜ける風。心地よい。今日は良い天気で、外に出たらさぞかし気持ちの良さそうだと思った。
そこで、ある考えに至る。

主人に気付かれないように、にやりと笑みを浮かべ、主人の名を呼んだ。


「なんだ、ピカ?」


主人が自分の方へと振り向いた瞬間、すかさず開けっ放しの窓へと飛び込む!


「ピカ!?」


外への着地が成功し、太陽の温もりを直に感じる。やはり天気の良い日は外に限る。
暖かさを体中に堪能していると、主人が自分を呼ぶ声が後ろから耳に入った。


「おい、ピカ!お前、何やってんだよ」

窓の内側から自分を覗き込む主人。
自分の行動に意図が見えないようで、不思議がってまじまじと見つめていた。
そんな主人から背を向けて、自分は構わず一目瞭然に駆け出した。


「ちょ、ピカっ!?」


主人が自分を追っかけてくれるのを期待して、走り続けた。





「まいったなぁ。ここらへんな気がしたんだけど…」

そこは深々と緑が覆い茂る森。隣町のトキワからニビまでへと続く、通称トキワの森だった。
レッドは突然いなくなったピカを、急いで追い掛けて、ここまでやって来たのだ。

「しっかし、ピカのやつ、なんでいきなりあんなに……」

何故ピカは、いきなり外へ飛び出したのか。自分にそう訴えてくれれば、いつでも外へ出したのに。
そう思いながら、全く理解ができなかったレッドは、頭を捻りよく考えた。
途中、この森へよく遊びに来る少女が頭をよぎったが、まさかと思いつつピカを探すのに専念する事にした。

もし、ニビシティまで行っていたとしたら厄介だ。ピカの事だから野生のやつにやられるとは思えないけど。
森を歩き続けて数十分。かすかにだが、どこからか声がした。自分がよく知っている声。耳を澄ませながら、声へと近づいていく。
草木をかきわけ、ひらけた場所に出た。


そこには自分が探し求めていたピカと一緒に、自分のよく知る人物が一緒にいた。
ピカはよっぽど外に出たかったのか、はたまた恋人と一緒な事が嬉しいのか、元気良く走り回っていて、そしてそれを微笑ましそうに眺めながら、その場にぺたんと座っているのは―――、


「……ぁ、レッドさん」


その場に立ち尽くすレッドに、ようやくイエローは気付いたようだった。しかし気付いたのもつかの間、イエローはレッドを背けるように顔を俯いてしまったのだ。俯いても尚、イエローの顔は赤くなっている事が伺えた。

「イエロー、どうしてここに?」

「僕は、いつもの通りにお散歩です。そしたら、突然ピカが飛び出してきて…。レッドさんは?」

「俺は、ピカがいきなり走り出したもんだから……」

そしてレッドは横目でピカを見る。さっきまでチュチュと一緒に走り回っていたというのに、いつの間にかピカはこちらを見つめていた。じーっと、何かを訴えるように、真剣な眼差しで視線を送っていた。

……ああ、そういう事か。


「なぁ、イエロー」

「なんですか、レッドさん?」

「俺も一緒に"お散歩"していいかな?」

「ぁ、……はいっ!」



顔を真っ赤に染めて笑うあの子と、それを微笑みながら見つめる主人を見届けて、やれやれと一息つく。
後ろで待ってくれている恋人が、くすりと笑い、それにつられながら自分も笑った。
そして彼女がまた追い掛けてみろと言わんばかりに駆け出したので、負けじと彼女の元へ走っていった。


10.5.17
//おいかけっこ