泣かない君へ

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再会の才 / よろずりんく

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2ED直前のカイリ視点






何かが起こる、そんな予感がした。
異変に気付いたらしい二人が走ってこちらに向かってくる。

「ソラ!リク!」

私も名前を呼んで手を伸ばすけれど、それはもう遅くて。
ナミネが開いてくれた道が閉ざされてしまったのを目の当たりにして、呆然と立ち尽くすしかなかった。

「う、嘘……」

もう一度手を伸ばしてみるけど、向こう側に見えるのは辺り一面の闇、闇、闇。
どこにも二人の姿は見当たらない。掴めるのは虚空ばかり。

「カイリ!」
「お、王様……。二人が……!」
「二人なら大丈夫」
「でも!!」
「ここに居続けると僕たちも危ないんだ。さぁ、一刻も早く行こう」

王様の説得により、ここから離れる事を承諾したけれど、もう私の心には不安しか生まれない。
光しかない自分の身体に感謝したいくらいだった。もし、私がそうではなかったのなら、この無限に続く闇に侵食されて、自分を保てなかっただろうから。
やがて、先で眩しい程の光が漏れているのを見つける。多分、出口だ。
光に足を踏み入れると、そこは、見覚えのある景色が広がっていた。
高台から見渡す夕焼けに染まった広大な海と、よく二人と一緒に腰を掛けながら楽しく喋ったパオプの樹。
ここは――。

「ここは、どこだろう」
「帰ってきたんだ……」
「え?」
「ここは私が、私達がいつも遊んでいた場所なの」
「ってことは、カイリ達の世界?」
「うん」

懐かしい。
ここには随分と来ていなかったから。
次にこの場所を訪れる時は、二人と一緒にって決めてたのに。
あの二人と一緒に来たかった。
ねぇ、ソラ、リク。どこにいるの? ううん、無事なの?
それだけでも良いから教えてよ。
折角、これからは一緒にいられるって思ったのに、こんなのってないよ……。
どうしたら良いの、私はどうしたら良い?

「あの二人なら大丈夫だよ、カイリ」

どうして、そんな笑った顔で言えるの。
あなただって心配なんでしょう?

「今までだってどんな窮地でも脱してきたんだぞ!二人が簡単に倒れるなんて絶対ない!」
「でもっ」
「大切なのは絆を信じることなんだ。僕たちが信じてさえいれば、その繋がりをたどって二人は戻ってこられるはずさ」

ああ、やっぱり、私には待つ事しか出来ないんだ。
ずっと、待っている事しか――。
でも、それでも、私が出来る事、信じる事が二人の助けになるのなら、私は信じていよう。
二人の無事を、二人との繋がりを。
胸に手を当てて思い返す。二人とこれまで築いてきた思い出、たくさん。
すると、触れた場所からじんわりと広がるように暖かさが身体を包んでいく。私達の繋がりはここにあると、何かが、誰かが伝えているような気がして思わず口元が緩んだ。

(……ソラ、リク、私信じてるからね。無事に戻って来なかったら、許さないんだから!)

「なんだろう、あれ。光ってる?」

そう言って彼が指差す方向を見てみると、その通り、空の向こうで二つの光が見えた。
感じる。胸の奥でも核心を告げているのはきっと気のせいじゃない。多分、あの光は――。

「こっちに来る!」
「……!」
「カイリ?!」

ソラ、リク。
言いたい事は色々あるんだ。
大丈夫だったかとか、何があったのとか。
でも、やっぱり一番最初にはおかえりって言ってあげよう。
安心して泣きだしてしまいたいこの気持ちをこらえて笑って迎えよう。
この場所を旅立ったあの日から、やっと二人は帰ってこられたんだから。
この場所、ううん、私達の故郷に。

「た、ただいま」
「おかえり」


12.11.22
//そして繋がる