がぶり。



 鼻筋に触れた温度にマタ・ハリは思わず肩を竦める。キスされているというより、噛みつかれている、という表現が似合いそうな触れあい。大きな手のひらで頬を包まれて、もしかしてこのまま頭から食べられてしまうんじゃないかしら、なんて馬鹿げた空想が脳裏を掠めた。どうしたの、と問えば、うん、と喉の奥で声が響く。啄むような口付け。下唇を食む感触。
「ふふっ、ふふふ。ねえシャルル、擽ったいったら」
 とうとう我慢できずに笑いながら身を捩れば、つられてサンソンの肩も震え出す。そんな他愛ない悪ふざけがどうしようもなくいとおしくなって、もう、と伸ばした腕にもキスされてしまった。


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