瞼を閉じるまで、もう少し



 滔々と語られる小説家達の寝物語に、どっと笑いが沸き起こる。談話室のふかふかのカーペットの上にクッションや毛布を持ち寄って、宵っ張りのサーヴァントたちが思い思いに寛いでいた。ランタンの黄色い光の中で、ホットミルクの入ったマグカップからゆらゆらと白い湯気が立ち昇る。珍しく大仰に肩を震わせるサンソンの立てた膝に寄り掛かり、マタ・ハリもまた、俯くようにして笑いを堪えていた。馬鹿馬鹿しい笑い話ばかりでちっとも眠くなりはしない。
 寝間着の上に重ねたカーディガンの襟元を直すと、ふと、冷えるかい?と低い囁き声が耳朶を打った。そのまま大きめのブランケットにすぽりとくるまれて、見上げれば一緒にくるまった青年の薄氷の瞳が優しく眇められている。
 さて次はお待ちかね恋物語でもお聞かせしましょうか。
 そう始まったひそひそ声にどちらからともなく微笑んで、揃って耳をそばだてた。
 ミルクの甘いにおいがする。誰かがくあ、と欠伸をした。


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