轟焦凍は、エンデヴァーの息子。
生い立ちゆえに口を開けば不躾で、決して愛想のいい方ではない。
それ故に敵も作りやすく、誤解を招きやすい人物でもあった。
雄英高校ヒーロー科。
全国に名が知れている、有名な学校。
轟はここの1-Aに在籍している。
色々な、レベルの高い個性を有している面々が集うこの中で気の合う友人が出来るわけではなく、轟は結果的にまた孤立していた。
自分から率先して打ち解けようとか、そういう姿勢も見れないし、当たり前と言えば当たり前なのだが。
別に慣れ合うつもりもない。
1人の方が気が楽だとさえ、轟は思っていた。
午前の授業が終わり、昼休憩。
轟は賑わう食堂ではなく校舎裏の、静かな空間へと移動した。
手には学校に行く途中のコンビニで買った小さなソーセージが入った袋を携えてる。
目的の場所に着いた轟は辺りを見回した。
「……いねえ」
誰がいるわけでもない、1人の空間にぽつりと轟の声だけが響く。
自分が独り言を言った事に遅れて気づき、1つだけため息をついた。
聞かれてなくてよかったと轟は思った。
食堂に向かおうと踵を返すと、携えていたコンビニの袋がくしゃりと音を立てた。
そして同時に、轟は歩いていた足を思わず止めてしまう。
そこにいたのだ。
1人だと思っていた場所に、1人の少女が立っていた。
轟をじっと見据えたまま、動かずにそこに佇んでいる。
轟は少しだけ不機嫌そうに、反射的に眉間に皺を寄せる。
気怠そうに後頭部を数回かいて、再び前を見据える。
しかしその少女はそんな轟を気にすることなく、ただ変わらずに佇んだままだ。
聞かれたか。
そう思ったが轟は大して気に留めない事にした。
何食わぬ顔でその隣を通り過ぎ、食堂に向かっていく。
通りざまに1度だけ、少女と目が合った。
茶色の瞳をした、少女の目は、まっすぐに轟を捉えている。
轟と少女――苗字はなんとなく思った。
(こいつ、)
(あの人、)
なんとなく似ている気がする、と。
似たもの同士の彼らは、大して会話をすることもなくそのまますれ違う。
吹く風が、彼らの髪をゆっくりとなびかせていった。