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※轟・主人公は成人済みです。
※20歳+2〜3 ぐらいと思ってください。同棲設定です。
※少し大人な表現が混じっています。
※苦手な方はブラウザバック推奨です。



もうすぐで0時を回る頃。玄関に大きすぎる届け物が届いた。

「奏出さん!お久しぶりです!」

いつもは自信なさげに話す緑谷くんが大きな声で言った。
顔をほんのり赤らめて、吐く息からはお酒の匂いが混じっている。

「ちょ、デクくん!声大きいって!」

ドアの隙間から顔を覗かせた麗日さんが困ったように眉を下げていた。
緑谷くんは麗日さんに向かって気分が良さそうに、にこにこと微笑んでいてる。
典型的な酔っ払いだ。麗日さんはさらに眉を下げて困っていた。

「焦ちゃん、起きて。緑谷くんと麗日さんが送ってくれたよ」

酔っ払いは1人だけじゃなかった。
気持ちよさそうに目を閉じている彼は、緑谷くんに肩を回して項垂れている。
今日は緑谷くんと飯田くんと3人で飲むと言っていた。
確かみんなお酒はあんまり強くなかったはずだ。
きっと盛り上がってみんな酔っ払って、麗日さんも急遽呼び出されたんだろう。

「彩海……」

目を覚ましたのか、今度は私にもたれかかるように抱き着いてきた。
突然のしかかる重みに体がよろめく。
鼻にはお酒の匂いがつん、とささった。
相当飲んだらしい。

「奏出さん、大丈夫ですか!?」
「大丈夫。2人ともありがとね。気を付けて帰ってね。おやすみ」
「おやすみなさい」

麗日さんが苦笑しながらゆっくりと扉を閉めてくれた。
その音に反応したのか、彼はむくっ、と顔を上げる。
動きに合わせて再びお酒の匂いが漂い、反射的に顔をしかめた。

「……腹減った」
「え!?食べてきたのに!?」
「〆に何か食いたい」
「えーと……カップラーメンならあるけど」
「彩海が作ったやつがいい」

ぎゅっ。私を抱きしめる力が強まった。
酔っ払って甘えモードになっている。
まるで小さな子が甘えてるみたいだ。

「何食べたい?」
「……この間作ってくれたやつ」

きっと風邪をひいた時に作った卵雑炊の事を言っているのだろう。
どうやら気に入ってくれたようだ。

「わかった。じゃあ一緒にキッチン行こ?ね?」

私の声に渋々体を起こす。
拗ねたような表情を浮かべながらも、彼はよろよろとキッチンへと移動した。

「はい焦ちゃん。お水飲んで。お酒残っちゃうよ」

素直に黙ってグラスを受け取る。
ちびちびと水を含んでいくその姿が可愛らしくて、思わず頬が綻んだ。

彼を横目で見ながらエプロンをして、髪を適当にまとめる。
冷凍していたご飯を電子レンジにセットして解凍する。
お鍋を火にかけて、食材を取りに冷蔵庫へと向かった。

「わっ!」

思わず持っていた卵を落としそうになる。
突然、背後から人肌と重みに襲われた。
振り向かなくてもわかる。また、彼が私に抱き着いている。

「焦ちゃん?どうしたの?」

私の髪に頭をうずめて、ただ黙って動かない。
ああ、くっついていたいんだろうなと理解した。
彼の髪にそっと触れて、軽く頭を撫でる。

「焦ちゃん、今日楽しかったんだね。よかったね」

こくん。ただ黙って頷く。
楽しかった、と聞いて、つられて私も嬉しくなる。
好きな人の幸せそうな顔を見ていると、同じような気持ちになれるから不思議だ。

雑炊もほとんど仕上げに近づき、いい匂いが漂っていた。
薬味のネギを刻み、あとは卵を溶きほぐして入れるだけだ。
容器に卵を割り入れた瞬間、彼は顔を上げて私の耳にキスをした。
突然の事に驚き、思わず体が飛び跳ねる。

「彩海。いい匂いする」
「え!?そ、そう!?」
「早く食べたい」

いい匂いって私じゃなくて、お鍋の事か。
自意識過剰だ、私。
いやでも、思わせぶりな言い方をする彼も悪いと思う。

卵をゆっくりと落としていく。
熱で透明な黄色が固まり、ふわりと食欲のそそられるような湯気が舞った。

「焦ちゃん出来たよ」
「……持ってく」

私から離れ、食べる分だけ丁寧によそってテーブルへと彼は向かった。
ふうふう、と冷ましながら一生懸命に雑炊を口に運んでいる。

「おいしい」
「よかった」

普段はおいしいとかあまり口にしてくれない分、結構嬉しい。
こういう意味では酔っ払ってくれててもいいかも……適度になら。
お酒に飲まれた彼を介抱した記憶が蘇る。
本当、何事も適度が一番いい。
人には向き不向きってものがあるんだ。

「……歯、磨いてくる」

あっという間に完食し、彼は満たされた顔で洗面所へと移動した。
空になった器を洗っていると、よろよろとベッドに入った彼が横目で見えた。
洗い物を終え、キッチンを綺麗にする。
エプロンを外して電気を消して、彼に続いて寝室に向かう。

「おやすみ」

先にベッドに入っていた彼の耳元で囁いた。
彼を起こしてしまわないように、そっと布団に入ろうとした瞬間。

「!!」

突然腕を引かれ、唇が塞がれた。
体が反転し、彼は私の上に跨っている。

「言っただろ。早く食べたいって」

さっきまではあんなに可愛かったのに。
まるで別人のように、クールな表情で私を見下ろしている。
あまりの変わり映えに呆気にとられ、動くことが出来ない。

彼は再び唇を重ねる。
何度も角度を変えて触れ合い、そのキスは深さを増していく。
静かな部屋に私の浅い息と、水音が響いた。

「彩海の声、聞きたい」
「えっ……?」
「いつも俺にしか聞かせない声」

彼は笑った。
色っぽいその表情に、胸が強く鳴る。

彼が私にキスを落とす。
その動きに合わせて、ベッドのスプリングがギシリ、と音を立てて撓んだ。
嗅ぎなれた彼の匂いと、アルコールの香りが混ざり、強い目まいがした。

酔いしれているのは私の方かもしれない。
そんな錯覚に陥りながら、迫りくる快楽にこらえきれず、彼の腕を強く掴んだ。

酩酊、溺れていく夜