ニオ救出からしばらく経ったある日のこと。
「ただいまー!」
「カイー!帰ったよー!」
数日ぶりにフィルツベルクの家へと帰って来たアーシャとニオは、返事が返ってこないことに首をかしげた。
錬金術に貪欲なカイは、ひとりで錬金釜の前にいることも多く、ふたりがいなければ十中八九そこで作業をしていて、帰宅を告げると笑顔でおかえりと言ってくれるのが常である。(それ以外は錬金術の本を読んでいたり、新しいレシピを考えていたり、甘いものを食べている、といった具合である。)
それなのに今日は返事がない。作業もしていないようで、錬金釜の前にも、ソファーにも見当たらない。
と、そこまで見たところで、机の上に何やら折り畳まれた紙を見つける。
この時点で嫌な予感がしつつも、ふたりはそっと紙を広げた。
「今までありがとう。俺は世界をもっと知りたいし、自分のことも何かわかるかもしれないから、旅に出ようと思う」
アルトゥール家とその関係者たちは、上へ下への大騒ぎとなった。
師匠たち元気かな。元気だろうな。
やっぱり書き置きひとつで出てきたのはまずかったかな……でも俺は中央の錬金術が見てみたいんだよな……。
などととりとめもないことを考えながら、片手鍋に真っ赤なリンゴやら葉っぱやらを入れて錬金。しばらくして取り出されたのはリンゴのタルト。適当に切り分けたうちのひときれを、行儀悪く手掴みで頬張る。サクサクのパイと甘く瑞々しいリンゴの美味しさ。うむ、今回も良い出来である。
錬金術で食べ物を作り出すことに初めは抵抗があったものの、馴れてみれば普通に料理するよりも早くなってしまったのである。手間かけて普通に作るのも好きだが。
しかし旅の供はおらず、大嫌いな戦いも想定しなくてはならない状況だ。食事にあまり時間をかけてはいられない。悲しいところである。
食事が終われば明日の準備をして就寝。本日も例に漏れず、足りなくなった回復薬や爆弾の補充を終えて寝転がる。約半年ほど続けてきたルーティーンも、そろそろ終わりを迎えそうである。
というのも、なんとなく見覚えのあるマップや場所が増えてきており、どうやら目的地が近いらしい。数日中につけるといいな。
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