SSおきば

※:性的描写あり

20.06.06

シナトくん×ヒカタくん
愛情200ml分の話
今日のシナヒカちゃんのお題は【君といれば地獄も天国】です。
https://odaibako.net/gacha/102


 暑い。力なくそう零す回数は既に昼前である現在の時点で数十回は超えている。その度にうるさいと蹴られ殴られ散々怒られて、さすがに致し方ないと買っておいたアイスクリームを二人で食べるも外から射し込まれる痛い日差しは止む事を知らない。事の発端は今朝方リビングの冷房設備が突然故障した一件から始まり、いくら扇風機を動かしているとはいえ生温い風を循環させたところでたかが知れていて、あまりの暑さで次第に機嫌を損ね始めたヒカタは今一人浴室で冷たいシャワーを浴びている(一緒に入ろうとしたら当然の如く追い出された)。

「いやほんと、なんで今日じゃなくて明日しか来れないんだよ、業者ぁ……」

 このままでは本当に干からびて死んでしまう。掻いた汗でベタベタになったTシャツを着ているのも億劫で床に転がりながら脱ぎ捨て、そして履いていたスパッツも力任せに剥がしては抜いた足の爪先で器用に宙へと放った。誰もいない空間とはいえパンツ一丁で大の字に寝転がる事に多少抵抗はあったものの、体感として得られる涼しさに代えられるものは他にない。熱に浮かされてまともな思考が出来ないという理由もあるかも知れなかったが、今はただ一生懸命に風を送ってくれる扇風機の恩恵を受け、明日へと命を繋げる為に必死なのである。

「どけ、邪魔だ」

 数十分後。ようやく体温が正常へと戻りつつあり、心地の良さにすっと瞼を落として夢の世界へと旅立とうとしていたその時。左脇腹に突然痛みと衝撃が襲い掛かり、何事かと飛び起きればそこにはさっぱりと体を清め、薄いタンクトップのインナーとこれまたパンツ一丁のヒカタが仁王立ちしているものだから思わず息を呑んだ。よりにもよって夏用の冷感インナー、しかも色が白のせいで目を細めると明らかにその裏に隠されているはずの飾りの存在を確認できてしまう。そんなえっちな格好をしているなんてもしかして誘っているのかなどと思いつつも、そういえば自分もほぼ裸同然の格好をしていた事を思い出して、危うくそれを口に出す前に心の声を腹の底へと飲み込んだのだった。

「暑いからってだらしない格好してんな。襲われてえのか」
「えっ! ヒカタにだったら襲われても……いだっ! 痛い、蹴らないで!」

 嫌よ嫌よも好きのうち、慣れた様子で恋人を足蹴にする彼の行動はただの照れ隠しで愛情の裏返しでもある事は百も承知である。何故ならば、荒っぽい対応を取りつつもヒカタはこうして冷たい水の入ったコップをわざわざ持ってきて、飲めと言わんばかりに押し付けてきているのだから。

「これ飲み水だよね?」
「当たり前だろうが」
「ちょうど喉乾いてたんだ」
「そりゃそうだろうな。熱中症手前まで来てりゃ乾きもするだろ」
「……そんなヤバイ顔してる? 俺」

 どうやら無自覚のまま危ない状態で意識を沈める手前だったようで、言われてみれば感じるずっしりと重い頭の痛みと全身に溢れた冷たい嫌な汗に思わずがっくりと肩を落とした。
 よくよく見上げてみれば、そこにいたのはいつもの彼ではなくどこか心配そうに眉を顰めたヒカタが確かに存在して、視認をしたらしたで何となく恥ずかしくて力なく笑えば、呆れたように溜息を吐いた彼にさっさと飲めと催促をされ、ついでのようにぽかりと頭を叩かれてしまった。

「んぐっ……愛されてるなぁ、俺」
「次はねえぞ。死んだらそのまま放置するからな」
「えーっ! うぐぐ……お化けになってもヒカタから離れるつもりはないからぁ!」
「地縛霊かお前は!」



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