SSおきば
※:性的描写あり21.01.03
ヨリ×マゴ
酒癖の悪い話
年明け早々、といった季節感のある言葉に対して特別思う事はない。国民的な行事でさえ自身には関係のないものだと思っていたし、事実本当にどうでも良いものだったのだ。新年に切り替わったと言えど周りの環境に変化があるわけでもない。強いて言うならば毎年面倒がることも無く近所のスーパーがお正月セールをおっ始めてくれて普段よりも食料品を安く購入できて少しお得、それだけだった。そういった気持ちは独り暮らしでなくなった今でも代わり映えはなく、テレビの向こうでは大盛り上がりのカウントダウン番組もそれ程興味はないし、幼馴染と盃を交してくだらない世間話をしていた方がいくらかマシにも思えた。
「割と面白いぞ。ほら、なんか懐かしい芸人とか出てるし」
「あのさぁ、もう少しよく考えてみろよ。年を越すってのはつまり、また年を一つ食うって事だぞ。お前分かってるのか!?」
「今更一つ二つ増えた所で大した変わらねーっての」
自分と同じ年齢(だと思われる)の彼が年の割に若々しく見られるのは、恐らく適度に鍛え上げられた身体と少し幼ささえ感じる童顔が物を言わせていて、年を取る事に抵抗がないのは頷けるもののこちとらそう簡単には行かない。幼馴染であるはずの彼と比べてとにかく老けている。大人っぽいといえば聞こえは良いが、普通に老けている。顔も雰囲気も実際の年齢も。昔から生気がないとよく人に言われていた、この真っ白な肌の色から起因するイメージのせいもあるかも知れない。とにかく血が通っていない、不運そう、苦労性、いつも疲れた顔をしている、からの老けているという負の連鎖が謎の年の差を感じさせている事に間違いはないのだった。
(だから俺にとっては由々しき問題なんだよ……!)
ちびちびと酒を口にしながらテレビを見てげらげらと笑っている幼馴染は、そんな自身の悩みなど露知らず。不貞腐れながら注がれた一杯を一気に飲み干すとコタツ机にそっと半ばやけくそ気味に突っ伏した。アルコールの回った頭はもやもやと霧が包むように霞み、熱を帯びた手足はしっとりと汗を掻いている。しかし不思議と眠気はなく、幼馴染の機嫌の良さそうな声ははっきりと聞こえていた。
顔が老けてきた、と感じるようになったのはもう随分と昔の事になる。老けたというか、気力が沸かない。長年に渡り、生きよう、生きたいという気持ちが欠如していたのだから当然の事とも思える。何せ、日々死ぬ方法ばかり考えてきた人生だったのだから、若さを保つなど以ての外なのかも知れない。これも呪いを振りまいた自身の受けるべき報いなのだろうか、そう一人心の中でぐちぐちとべそを掻いていると、ふと背中がぬくもりに包まれ、不思議に思い涙を浮かべたままの顔を上げゆっくりと振り向いた。
「……ヨリ?」
「まーた余計な事考えてるな」
余計なとは失礼な、すぐさまそう反論しようと思ったけれど、幼馴染のいつにも増して真剣そうな表情に思わず喉元で止まったそれを無理矢理飲み込んだ。
「まぁ、その……なんだ。俺は、えっと……年とか、そういうの気にしてないし。いつだってお前の事、あの、あ、あい、してるし、それと、いつも、綺麗だなって思っ、思ってる、からよ……」
「はっ……は!? あ、いや、お前……もう、バカ! 正月だからって酔い過ぎなんだよ!」
顔が真っ赤に染まりきっているのはきっと、お酒だけのせいではない。でもそれは自身も同じ事で、やり場が無くなったらしい、そっと腕を掴んできた彼の手が汗でびっしゃりと濡れていて思わず笑いそうになる。相変わらずの、しかし彼らしい真っ直ぐで分かりやすいその言葉がいつの間にやら暗い気持ちを吹き飛ばしてくれていた事に気付いて、幼馴染の耳元に顔を寄せてはぼそりと呟いたのだった。
「俺も、ずっと……あいしてる。この先、おじいちゃんになっても」
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