SSおきば
※:性的描写あり22.07.05
ヨリ×マゴ
赦しを請う話
ヨリマゴへのお題は『生きている理由なんて、そんな』です。
https://shindanmaker.com/392860
子供の頃は生みの親をよく呪ったものだった。欲しくもない命を勝手に宿しておいて、愛もなく産み落としたあと雨風に晒されるような場所へ捨てられれば誰だってそうなる。大人のくせに無責任なことしやがって、そう思わずにはいられなかったけれど、いざ自分がなってからというものの、そもそも大人はずるい生き物なのだと知った。でも、あれと同じ最低で最悪な大人にだけはなりたくなかった。それだけは絶対に、命を粗末にするような、ましてや守るべき家族を見捨てるようなことだけはしない、そう心に誓っていた。
「だからって、何してもいいってワケじゃねえのにな」
無我夢中だった。時間がないと分かっていたから焦りももちろんあった。無駄なことは何一つしたくなくて、少しでも近道になるのならどんな悪事にも手を染めた。たとえそのせいで自分の心を殺さねばならなくなっても、大切な家族を守れるのであれば躊躇いなどない。今思えば酷く愚かで、現実から目を背けてばかりの馬鹿だった。奇跡だけを信じて、自分だけが彼らを支えられる存在なのだと錯覚し、結果的にその片方を失って、そしてそこでようやく自分の行いの醜さに気付いたけれどどんなに悔やんでも涙はもう出なかった。
「でも、見て。それでも俺は、お前が救ってくれたからこうして今を生きてる。俺だけじゃない、リンや……それに、彼女も」
ずっと見たかった笑顔。ずっと、隠し通せると思っていた彼への想い。全てが正解だったとは思わない、でも、間違いだけではなかったと今なら言い切れる。何度も夢見た幸せな日々をきっと、今からでも掴めるのだと確信できる程にそれは酷く眩しくて、愛おしいものだった。こんなにも薄汚い自身を受け入れてくれた彼の側に居たい。これからもずっと、その手を離したりはしない。そう、心に決めて。
「マゴ」
白くて細い、だけどとてもあたたかい手を絡めとる。引き寄せた体は相変わらず肉付きのないものだったけれど、つい腕に力を入れすぎてしまう程に気持ちが込み上げて、堪らずいつもしっかりと抱き締めてしまう。苦しいよ、ヨリ。くすくすと苦笑を零しながらそう話す彼が生きる証の鼓動が心地良かった。何秒何分何時間、数では数えられないくらいずっとずっと聞き続けていたい。
「もう、ちょっと」
「……うん」
「あと、五分だけ」
「あはは、今日は長いね」
「疲れてんだ、多分」
「……そうだね。きっと、そうだ」
生きる理由なんて、もう。他にはない。
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