SSおきば

※:性的描写あり

22.12.08

だいきくん×ナナオくん
だいふくもちの話
 初めは単純にやり返したいという気持ちだけだった。普段から頬やら腹やら太ももやら足やら見境なく、それも無許可でべたべたと触ってくるものだからそろそろ異議を申し立てたいと思っていたそんなある日、彼が人の見ている場所でも平気で尻を触ってきたのでついに堪忍袋の緒が切れる時が来た。とりあえずその手の甲をしっかり抓り、背後で上がる雄叫びのような悲鳴を無視しては腕を掴み引きずるように帰路を辿る。

「どういうつもりなのか、一応弁明だけは聞いてやろう」
「いや、これはその、あまりにもナナちゃんの触り心地が良くて、体が勝手に……」

 まず何を言っているのか理解をするのに時間を要した。あまりにも疑問点が多すぎる。まず触り心地がいいって何だ。ボーイの肌触って癒やしを得るな。次に体が勝手にとかいうあまりに見苦しい言い訳だがこちらも勿論見過ごすつもりはない。そっちがそう来るならこっちにも考えがある。
 だいき、ステイ。そう一言指示を送れば、冷や汗に塗れた体は素直にベッドへと腰を掛ける。少しばかり不安そうな面持ちで見上げる恋人に思わず頬が緩みそうになったけれど、威厳を保つためにも表情には出さないようどうにか必死に耐えた。こちらとしてもやられっ放しのまま、黙っているつもりはないのだ。
 それなりに反省している気持ちはあるのか、全てを受け止めようと言わんばかりに黙り込む彼の膝の上へと跨るように躊躇いなく座った。不意を突いたつもりだった。思惑通り、とんでもなく驚いているし目の前に浮かぶ表情は石のように固まって最早動かない。といえど、ふふんと優越感に浸りつつも、今自分のやっていることは非常に恥ずかしい行動であることを自覚しているため、自然と頬が熱く赤らめていく。

「……ていっ!」
「ぶほへッ」

 そうなると先手必勝、面倒な指摘をされる前に開いた両手で弛んだ彼の頬を潰すようにもにょりと挟んだ。そしてすぐさま指先を動かして、マッサージの如く柔らかい団子のようなそれを揉みしだいていく。

(あれ……なんか、結構)

 いい感じに柔らかい。それ以降は不思議なことに動かす手が止まらなくなった。結構な勢いで捏ねているため、だいきの口から聞こえるのは、うお、だとか、んえ、だとか擬音のような言葉ばかりで正直何を言っているのかさっぱり分からない。しかし、少なからずやられている側も具合がいいようで、次第に細められた瞳はすっかり蕩けてしまっている。

「……き、気持ちいい?」
「ん〜〜にゃにゃちゃんうみゃいね、きみょちいい」
「あ、っそう……」

 至極幸せそうな恋人の表情に今まで沸いていた怒りもとうに消え失せていて、いつも通り仕方がないなと肩を落としては、自然と腰に回された手に気付かないふりをする。
 甘えられることには慣れていた。長男として生まれてきた立場上、これから先も大切な弟、妹たちを守り腕を引っ張っていかなければならない。今も昔もその考えは変わらないし、それが役目だとも思っている。

(……こういう時くらいは、委ねてしまってもいいかな)

 恋人と二人きりの時くらいお互いに甘えたいし甘やかしたい。時には気張らずにだらしない時間を共に過ごしたっていい。だいきと出会うまでは、そんな考えは一つもなかったはずだった。
 延々と頬を揉みこんでいるうちに不思議とそんな思いが頭の中を駆け巡り、すっかり骨抜きにしてしまった彼の唇へそっと口付けると、にっこりと浮かんだ笑顔につられて小さく笑ってしまった。

「ナナちゃん」
「何?」
「……やっぱり、大好き」

 フク越しに伝わるぬくもりがうるさく鼓動を高鳴らせていく。ばか、そう零せばお返しと言わんばかりに柔らかな感触が額へと優しく触れていた。


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