SSおきば

※:性的描写あり

25.04.10

相方くん×おにいさん
不器用な甘えん坊の話
 して欲しい、とストレートに頼めるほど素直にはなれない。小さな子どもならまだしも、これでも一応立派な大人だ。理由もなくそんな甘え方なんて恥ずかしくて出来るはずもなく、あのさ、と声を掛けてみるも、結局は飯でも食いに行こうぜなんて照れ隠しをしてしまうものだから、自身の意気地のなさにがっくりと肩を落としてしまう。
 どちらかというと、頼むより頼まれる方が多かったせいもあるのかも、と最近は思う。ナギが今よりももっと幼い時はよくぎゅっと抱きしめては頭を撫でていたし、年相応の甘え方を自分にしてくれる彼女に愛しさを感じた。まるで本当の妹のような、そして本当の兄のように慕ってくれるナギとの触れ合いは今思い出しても温かいものばかりだったが、いざ相方へ同じように甘えるのはさすがに気が引けるのも仕方がないと思う。

「……ナタ」
「うーん、でもなあ……」
「おい、ヒナタ」
「さすがにやっぱ……うわあ! お、おかえりっ」
「ただいま。オマエにしては珍しいな、考え事か?」
「し、失礼な。俺だって色々考えるときもあるしっ」

 コンビニへ出掛けていたマサキが知らない間に帰ってきていたことに気付かず、堪らずびくりと体を震わせてしまって仄かに頬が熱くなる。それを見てくつくつと笑いながら袋を提げた彼は、ソファに座っていた自分の隣りに腰を下ろし、がさごそと中身を明後日はその中の一つをこちらへ投げつけた。

「おわっ、と、何……柿ピー」
「あとこれ」
「さすが分かっていらっしゃる」
「炭酸飲みながらプリン食うやつなんて、オマエくらいだからな」

 珍しく夜食を買いにいくだなんて暗くなってから出歩くものだから何を買ってくるのかと思えば、どうやら自分のためのつまみの購入が目的だったらしい。こんなさり気ない優しさを垣間見ると、どうしても愛しさが溢れて彼のことが好きだなあと再認識してしまう。
 そんな器用な彼と比べて、やはり自分は不器用だなとも思う。素直になればいいじゃないか、五分前の自分にそう語りかけても未来は変えられそうにない。でも、このほっこりとした温かな気持ちが尚更人肌を恋しいと思ってしまう。小袋に入った柿ピーをひと粒口の中に放って、ぽりっと音を立てながら、あと数センチ、数ミリ、ごくりと息を呑みながら冷えた右手に触れてみる。会話はないまま、部屋にはテレビから聞こえるバラエティの笑い声しか響いていない。そっと手を重ね、指と指の間に潜り込むように甲を握る。大きく息を吸って、そのままちらりと隣の顔を見上げてみた。と同時に、ばっちりと合う赤い目線に驚いて堪らず変な声を上げてしまうと、その挙動不審さがツボに嵌まったのか、マサキが腹を抱えて笑うものだからげんなりと肩を落とした。

「俺が悪かったですから、もうそれ以上は勘弁してくだはい……」
「おま、オマエが、笑わせるのが悪い、っ」
「わざとじゃないんです……」
「で、何だ。言いたいことがあるんだろ。ここまできたらはっきり言え」

 こうなってしまっては降参する他ない。弁解の余地もなければ、これ以上は隠し通せる気もしない。しかし、これは逆に言えばチャンスなのだ。彼が言えというのだから、そのままの気持ちを言えばいい。タイミングだっておかしくない。これこそ寧ろ、自身が求めていたシチュエーションだったのだ。そう思わなければ、あまりの羞恥心で顔が焼け焦げてしまいそうだったのだ。観念して、両手を広げてぼそりと呟いた。

「…………ぎゅって、して欲しい、でした」

 必死に絞り出したその言葉を言い終える前に、大きな両腕に包まれた瞬間、あまりに心地良くてちょっぴりだけ溢れた涙はすぐさまぬくもりの中に消えていった。

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