SSおきば

※:性的描写あり

25.06.01

ヨリ×マゴ
相手が死ぬ夢を見る話
https://odaibako.net/gacha/242


 また過ちを犯したのだと思った。今度こそ、本当に取り返しのつかない過ちを。目の前で次第に灯火を弱めていく彼の表情はどこか安らかで、満足そうに手を握る力ももう残っていない。さよならではなくて、またねと微笑むところもなんだか彼らしかった。それでも自分だけを置いて遠くに行ってしまう幼馴染たちにずるいと溢しそうになって、寸前にそんな文句を言える資格が自分にはないことも思い出した。彼も、彼女もきっと、自分に関わったばかりにこんな目に遭って、もっとこの世界で幸せに、ただ平和で静かに過ごしたかっただけだったのに、誰よりも早く消えてしまうなんて思ってもみなかっただろう。

(何度、代わりになれたらと願っただろう)

 出来ることはしてきたつもりだった。つもりなだけで、実際は何も出来ず、誰をも救えず、守れるものだって一つもなかった。今なら分かる、大それたことを言っても奇跡なんて起こす力なんて自分にはなかったのだと。
 瞼が静かに下りる。あんなに温かかった細くて長い手のひらはとっくに固く冷えて、少し力を緩めるだけでこうも簡単にはらりと落ちた。悔しくて、涙も声も出ない。命とはどうしてこんなにも儚いのだろう。彼の華奢な体をそっと抱き上げると、あまりの軽さに思わず腕に力が籠った。

(ごめん……ごめんな)

 そんな謝罪の言葉さえも烏滸がましく感じて、ゆっくりと暗く濁る黒に埋もれそうになったその直後、ばちんと弾けるように世界が音を立てて壊れたあと、眩しく光る蛍光灯の光と、その中で心配そうに自分を見下ろすマゴに堪らず息を呑んでいた。

「ヨリ、ヨリってば。ねえちょっと、大丈夫?」
「あっ……お、おう……なんか、俺」
「すごい魘されてたけど……待ってて、水持ってくる」

 慌てた様子で彼がキッチンへと向かう間にびっしょりと汗をかいた体を起き上げる。無意識に握り締めていたらしい両手がびりびりと痺れを帯びていて、どこか虫の居所が悪い感覚に舌打ちを打つ。
 枕の側に置いていた携帯電話を見ると、時刻は真夜中でまだ外も真っ暗だった。二人で床についたのは確か日付が変わる前で、そんな中彼の目が覚めるほどにどうやら自分は悪い夢を見て苦しんでいたのだろう。

「ほら、これ飲んで」
「……悪かったな、起こしちまったみたいで」
「そんなことより、もう大丈夫なの?」
「何が?」
「何、って……その、泣いてた、から」

 少し気まずそうにそう零したマゴの言葉にはっとして目元に指先を滑らせると、確かに水分の乾いたざらりとした跡がそこにはあった。

「ま、マジかよ……」
「無理して聞くつもりはない、けど……その。俺に出来ることあったら、遠慮しないで言って。俺だって、お前の力になりたいから」

 馬鹿にしてるでも冗談でもなく、ただひたすら真剣に訴えてくる彼の言葉が再び目元に熱を生みそうになる。それになんとか耐えながら、未だぞわりと震える心臓を抑えつけ、何も言わずにそっと両腕を伸ばすと、ようやくにこりと微笑んだマゴがこくりと頷いてその身を自身の胸元へと預けてくれる。とくんとくん、と生きている証が伝わって、腰へと回した腕、しわくちゃになるほどに背中でハラシロラグランを握り締め、苦しいよと笑う声に意味もなく涙が溢れてそっと肩越しでそれを拭った。

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