SSおきば

※:性的描写あり

25.08.01

ヨリ×マゴ
彼を自分のものにしてしまいたい、とぼんやり考える話
https://odaibako.net/gacha/242


 毎日、一人だった頃の記憶が今はもう薄い。どうやって一日を過ごしていたかとか、誰とどんな話をしていたかとか、全てを忘れてしまったわけではないけれど、誰かが隣にいる毎日が楽しくて仕方なくて、きっともう二度とあの寂しい日々には戻ることはできないのだと思う。ただひたすら耐えられない、想像しただけでも寂しくて堪らない。随分心が弱くなってしまったものだとがっかりもする。でも、ここ数年の間で、誰かを恋しいと思う気持ちは前を向いて生きる活力になるのだと思い知らされた。誰かを守りたい、誰かの力になりたいと思う気持ちも。

「俺の顔、毎日見てて飽きねえか?」
「見ない日があると不安になるくらいは、飽きてないかな」
「物好きなやつ」
「なんだよ、お前だって同じくせに」
「ははっ、まあな」

 ましてや子供の頃から毎日見てる顔。声も、姿も、その温もりも。全部独り占めできたら、どれだけ幸せな気持ちになるだろう。でも、それは絶対に出来ないことだときちんと理解している。現実的にも、なによりそんなことを望めば彼自身が幸せではなくなってしまうから。それに。

「……この間ね、リンちゃんがヨリのことお父さんみたいだってぼやいてたよ」
「げっ、なんでンな話してんだよ」
「もう子供じゃないのに、忘れ物ないかだとか家まで送ってくかだとか、変にお節介してくるからウザイ! だってさ」
「あのガキンチョ〜〜。ひとが心配してやってんのにっ」
「あはは。でも、そうは言うけどなんか嬉しそうだった。きっと、素直になれないだけだと思う」

 そうフォローしてみれば、照れ臭そうにそっか、と頭をぽりぽりと掻きながらそっぽを向く彼がなんだか可愛くて笑ってしまった。自分以外に対するそんな表情もやっぱり好きで、先程までぼんやりと考えていた邪な気持ちを首を振りながら追い払い、自然と浮かんだ笑顔が胸の奥を軽くしてくれたのだった。

「……変わらないことが、良い事だってあるよね」
「何だよ急に」
「ううん、何でもない。独り言」

 ぱちり。本日分の売上、すこぶる好調。指先で弾いた電卓をこたつ机の上に放っては畳の上にごろりと寝転んだ。見慣れた天井と、少し離れたところで大きな欠伸をしているヨリが見えて、つられるように口が開いて慌てて手のひらを当てた。

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