BO-1
わたしには亡霊が見える。
わたしの名前はジーナ。本当はジョジーナ。孤児のわたしがそれを知ってるのは、『ジョジーナ』と書かれた紙が、おくるみにピンで留めてあったから。その紙が名前を示しているかは、孤児院の誰も分からなかったけど、多分これがファーストネームだろうと、当時の大人たちの中で結論づけられたから、わたしはジーナということになった。
死者たちは人の形をしている。生前が人だから当たり前かもしれないけど。わたしには人以外の亡霊は見えないみたいだった。だって、体のどこかの部位が欠けたり、不自然に折れ曲がった動物が動き回るのを、わたしは一度も見たことがないから。
彼らは死んだ時の形そのままを保っていて、たまにグロテスクな人を見ることがある。初めて、顔中の肉がぐちゃぐちゃになった男の人(顔が見えない上に長めの髪を結んでたから、体つきで判別するしかなかった)を見た時はびっくりしたけど、意外と人は慣れるものだった。
生者と死者を判別するためには、彼らの体に血が流れているかどうかを見ればいい。もちろん、ナイフで切りつけたりするんじゃなくて、皮膚の色で判断するってこと。ここだけみればわたしが人種差別をしてるみたいだけど、そういうことじゃなくて、言いたいのは血色感の話。彼らは映画に出てくる死体みたいに、可愛げのない真っ青な色をしている。赤ら顔のルイスはあたかもフェイスペイントを施したみたいだった(彼の死因は高熱だったから、体は欠けたところがなくて、普通の人間のそれだった。色味を除いて)。わたしが見た3番目の死者が彼で(もし記憶が曖昧になっていなければね)、彼のお気に入りの木の下で、わたしが本を読んでいると、ルイスが話しかけてきた。彼は相変わらず話が下手だった。
わたしがホグワーツに入学してからは、この亡霊たちについての認識をいくらか改めなくてはいけなくなったけど、それはまたあとで話すことにする。アインシュタインみたいに好奇心に満ちた人なら、早く教えてくれと怒鳴るかもね。
とりあえず、わたしの幼少期には重要人物は___つまり、ハリー・ポッターとその周りの人に関わる事件に関連して、キーを持っている人は____誰も出てこないから、ここらへんで話すのは終わりにする。わたしがハリーの名前をピックアップしたのは、彼が魔法界の英雄と言われていて、その上、わたしが特に幸せにしたかった人たちが彼をとても大事に思っていたから。わたしの学生時代に様々な出来事が起きて、それらに鍵があるとしたら、その鍵たちが最後に集まるのはハリーのところだったと言っても過言じゃなかった。今でもときどき、昔を思い出しては、この世はハリーのための舞台だったのではないかと思うことがあるくらいには。
そして、最後に___この序章が終わる前に、例の『わたしが特に幸せにしたかった』人たちが誰かを言っておくことにする。じゃないと、誰に注目していいかわからないからね。これはミステリ小説じゃないから、重大なネタバレにはならないはず。
リーマス・ルーピン、そしてシリウス・ブラック。死者もカウントしていいなら、レギュラス・ブラックも入れさせてほしい。
わたしが同級生の誰かに同じような思い入れをしなかったのは、わたしに特殊な性壁があったからじゃない(だから、わたしが彼と恋仲に発展したことは、誰にも予想できなかった。当事者のわたしたちを含めて)。ただ、わたしが尊敬する人物像に当てはまる人たちが、あの世代に偶然集まっていただけだから(わたしは頼ることのできる人に憧れやすいと言う点では、偶然ではないかもしれないけど)、これだけは断りを入れておく。不名誉なあだ名が欲しいわけじゃないから。
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