「開かないねぇ………」
「そうね」
部屋に入った瞬間から動き続けているタイマーは止まることなく既に三時間を経過している。最初は近況報告や雑談をしていたのだけど、私はそこまで話すタイプでもないし及川もポツポツと言葉を発するくらいでさっきから私の手を握ったり閉じたりしている。いや、本当に何をする部屋なんだここは。
一面真っ白で何もないこの場所は「〇〇しないと出られない部屋」の紙しかなかった。
クリア条件が分からないなんて、手の打ちようがない。
でも、まぁ………一緒にいるのが及川だし。
そう思って、隣に座っている彼に少しだけ寄り掛かった。
「っ、律ちゃん!?」
「……何?」
「えっ!?いや、え?」
少しの行動で挙動不審になる彼の頭の中はどうなっているんだろう。
及川のことならある程度は分かると思っていたけれど、私もまだまだだなぁなんて。
「少し疲れただけ……だから、こうしてても、良い?」
「うん、良いよ。全然。じゃあ俺も!」
そう言った及川は私を後ろから抱きしめる様に座ったから、私は遠慮無く後ろに寄り掛かった。私より大きい体で、たくましくなった腕で、離さないと言わんばかりに抱きしめられるのが好きだ。
首元に頭を擦り付けられると髪の毛が当たってこそばゆいけれど、それでも及川の匂いとか感触がするのもだから安心する。
だから、まぁ………もう少しだけ。このままでいいかなぁなんて思う自分が居たりするのだ。
「……まだかな」
「開かないね」
* * *
タイマーがまた一時間経過したことを知らせた。
俺たちはこの、何もない白い空間でずっと座ってドアが開くのを待っている。
「クリア条件が分からないなんてクソゲーじゃん!」なんて思ったけれど、律ちゃんと一緒にいられる時間が長くなると思えば最高か?なんてすぐに思考が切り替わる。
それぞれが持っていた荷物もあるので飲み物には困らないし。でも、それでも時間が経つに連れて話題もなくなり、隣に座ってそっと律ちゃんの手に触れた。
こんな、白くて小さい手で、細い腕で。あんなバレーをするのだから凄い。
律ちゃんの手が俺は好きだ。ペンを持って少し硬くなった所とか、丸くて綺麗に手入れされた爪とか。律ちゃんの手を撫でたり握ったりしていると、律ちゃんが寄り掛かってきた。
こういう、気まぐれな猫みたいな。突発的に行動して、さりげなく甘えてくるところも好き。
「早く開くといいね」
「………そうだね」
なんて言いながらも、こんなゆったりとした二人だけの時間がずっと続けばいいのに、なんて思っている。
俺たちがここを出るのは一体いつになるんだろうかなんて考えながら、律ちゃんを抱きしめた。
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