みのり×タケル



ボーダー進学校、男子四人組。荒船、犬飼、タケルとそれから潮くん。全員性格違うし、犬飼に至ってはクラスまで違うけれど、今日もうちのクラスに四人集まって何かをしているみたいだ。…とわたしは近くの女子グループのお茶会に参加しながら聞き耳を立てている。男子会がどんな話してるのか気になるのだ。お茶会とかオシャレに言ったけどケーキとコーヒーとかそんな優雅なものではなくて、チョコフレークとパックのいちごみるくである。

荒船ってさ  だよね
  んぞ
ほんと  よね、

き、き、聞こえにくい!物理的距離が遠すぎた!ほぼ聞こえない!荒船って単語と語尾しか聞こえない!くそう、いつもわたしが四人のところに邪魔しに行くとぱたっと話を変えられてしまうものだからこうしてわざわざ遠くから聞き耳立ててるのに!きっと男子には男子にしか話せない話題があるんだろう、気になる、気になるぞ。

「みのり」
『ひえっ…!て、あれ!いつの間にかタケルに距離を詰められていた!?』

どしりと頭の上によく知る重みが乗って、振り返ったら先ほどまで遠くにいたはずのタケルがそこにいて。な、な、いつのまに!

「は?なんの話…、っていうか相変わらず小さくていい肘置きだよね」
『タケル氏や、ピンポイントでつむじに当たってるから少し肘の位置ずらしてほしいよ、痛いし将来ハゲちゃう』

くそうもしかして今日の男子会は終わってしまったのだろうか、結局今日も何の話をしていたのかわからないままだった。くやしい。きっとあれだ、もうすぐ夏だしプール開きだねって話してたんだよ、そうに違いない。そんで荒船って泳げないよねーみたいなことから、荒船って入水フォームだけは華麗で綺麗だよねって話してたんだよ。体育の水泳は男女別だからわたし見れないけど、風の噂に華麗なフォームだって聞いたことがあるから。見てみたいなあ。

『タケル、荒船の入水フォームのモノマネやって!』
「なんでだよ」
『机と机の隙間をプールへの入り口と見立ててさ』
「いやだからなんでだよ」
『だって、見たことないから見てみたいんだもん』

すこしだけ口を尖らせてそう言えば、タケルは「夏休み荒船とプールに行けばいいだろ」って返されて。ああ、そうか、モノマネしてもらわなくても一緒に行けばいいのか、タケルは天才か。わたしのポンコツ頭ではそういう発想が出来なかったよ。

『てかわたしそろそろタケルから肘置き料取っていいと思うんだけど!』
「いくら?」
『うーん、一時間900円』
「バイトか、高すぎでしょ。年会費200円で十分」
『200円』

やっすい、安すぎる…いや、200円貰えるだけでも十分か…?いやそれでも安すぎる…チョコボール3つしか買えない…店によっちゃギリギリ3つも買えない…A級隊員のくせにけちんぼめ…

『わたしが一年間でたべるチョコボールの数は3個じゃないよ』
「いやだからなんのはなし?」