心×まき



探していた彼女は学校から少し離れた小さな公園の遊具の中にいた、体操座りをしてぐすりと一回鼻を啜る音が聞こえて  ああ、やっぱり一人で泣いてたのね。まきは強い。強くて、格好良くて、優しくて、そして意外と脆いということを私はよく知っているから。

『まき』と彼女の名前を呼べば驚いたように勢いよく私の方に振り向いたまきは、私が来るなんて思っていなかったのかきょとんと目を丸めていた。いつも笑顔で人をばかりの彼女のそんな表情が珍しくて。ふふ、そんなまきも可愛いわね。なんて。

『いくら夏だからって、もうこんな時間だし寒いでしょう。ほら、私のブランケットを貸してあげる』
「…あはは、いつもと逆だね」
『お返しよ。まきはいつも私を守ってくれるもの』
「……聞かないの?ここでなにしてるの、とか」
『まきが言いたくなったときでいいわ。聞いても、聞かなくても、私の中ではまきはまきだもの。』

そっか、と呟いたまきの声はやけに弱々しくて。彼女が悩んでいた理由は、…恐らく家関係のことなんだろうけれど。でも私はそのことに突っ込むことなんてできない。私にできるのは、こうして彼女をそばで見守ることだけだから。

「心のそういうところ、好きだよ私」
『知ってるわ』
「うん、そういうところも!ていうか心の全部が好き!」
『ふふ、なあにそれ、まきはお馬鹿ね。』
「うわあ、心にも馬鹿って言われちゃった」
『でも好きよ、不思議ね?私はお馬鹿な子を好きになっちゃうみたい』
「えっ、物間と私を一緒にするのやめて!」

悩みなんて打ち明けてくれなくてもいい、頼ってくれとも思わない。私はこの子にとって一番心地いい距離感でいれたら、それでいいのだから。