メア×宇井




「お前は、寂しくなったりしないのか」

宇井に唐突にそう問いかけられ、メアはきょとんと目を丸めた。意味がわからなかったわけではない、ましてや驚いたわけでもない。ただ単純に意外だと思ったのだ。宇井がメアに何かを問いかけること自体珍しいことだが、その中でもだ。

きっと彼が言いたい寂しさというのは、ウタ達のことを言うのだろう。確かにメアは他の共闘する喰種とはまた別に、たったひとりでここまで乗り込んだ。道化師を抜けてまで宇井の元に行くことを選んだのだ。抜けたからといってウタたちの敵だというわけではないのだが、メアはメアのやりたいことのために動いているわけで。つまり彼等に対する裏切りと取られても間違いではないのだ。

『メア、さみしくないよ。だってメアには宇井がいるもん』

それはメアの本心だった。道化師のみんなと楽しく遊びたいという気持ちよりも、宇井を失いたくないという気持ちの方が強く、彼の側にいて彼と肩を並べることに不安も寂しさも感じなくて。それほどまでに伊丙入が亡くなったことは、宇井だけでなくメアにとっても大きな出来事だったのだ。あの日あの瞬間に、自分の知らないところで自分の大切な人が死ぬ恐怖を、守ることができなかった不甲斐なさを、初めて感じたのだから。

失うのが怖いのならば、自分が側で守ればいい。そのことをメアに教えたのはカネキケンという存在だった。人と喰種の両方の性質を持ち、それ故に誰よりも優れた力を持ち合わせていた彼は、一人で背負い過ぎてビルを覆う醜い化け物となってしまったのだが。それでも彼の生き様に触れ、覚悟に触れ、考えを改めたところもある。もし自分が側にいて、それでもダメだったのなら、それは仕方の無いことなんだろう。とメアは素直に思うのだ。

だからこそ、ここに  CCGに単独で乗り込んだことに後悔は無い。このまま死んでしまったっていい。宇井を守れるのならそれでいい。そんな自分の姿を亡き戦友が見たらどんな反応をするのだろうか。メアはハイルの姿を頭に思い浮かべて、くすりとひとつ笑みを落とした。