ルキ×ルイーズ



「ルキ、なにしてるの」
『………ルイーズ』

特に何もしていないけど、と溜息交じりに言ってから僕は手元の立体機動装置に視線を戻す。特に何もしていない、というか、何もすることがないからいつも通り手入れをしていただけなのだ。まだ訓練兵として支給されたばかりのそれは傷も少なく、綺麗なままで。どうせならこのまま綺麗な状態を維持していたいから。そんな僕の手元を眺めたルイーズは「へえ」と感心したような声を上げた。そのまま僕の横に腰を下ろして自分の立体機動装置を取り出した。

「ルキの凄い手入れされてるね、もしかして綺麗好き?」
『別に。…やることないからやってるだけ』
「偉いね。私のなんてほら、傷だらけ」
『それは君が沢山頑張ってる証拠でしょ、…悪いことではないと思うけど』
「!」

言った後にあ、と少し気まずそうに口を閉じる。目線は手元から動かさず、動揺している素振りを見せずに。そんなことを言うつもりはなかったのだ、そもそも会話をするのも面倒で仕方ないと思っていたのに、自然と声をかけられるものだからつい普通に返してしまった。
嘘ではないし本音には違いないのだが、急にそんなこと言われて嫌な気になったりしないだろうか。ルイーズは頑張り屋さんだとは思う。手を抜いている自分と比べること自体が間違いだけど、アルミンから聞く話によればその肩書きは間違いではないだろう。だからこそ彼女の立体起動装置に細かい傷が付いているわけで。
驚いたように目を丸めていたルイーズは、僕が黙り込んだことでぷはっと笑う。そんな笑顔を見たのは初めてで、今度は僕がぽかんと目を丸める番だった。

『…なに』
「いや、ルキって意外と周りのこと見てるんだなって」
『見てちゃ悪い?…嫌ならこれからは君のことは見ないようにするけど』
「いやそういうことじゃなくて、」

嬉しいんだ、そう言ったルイーズは照れたようにもう一度ふふと笑った。いつも何かを考えているようにしかめ面を浮かべてばかりなのに、そんな顔もできるのかと意外に思った。そっちの方が可愛いから、もっと笑えばいいのに、とも思った。言わないけど。

「正直言うと手入れの仕方がよくわからなくて。放置してたからこんなに傷だらけになっちゃったんだよね」
『なにそれ、さっきの僕の言葉返してくれない?』
「まあまあ。頑張ってるのも一理あるからルキの褒め言葉は素直に受け取るよ」

嬉しそうに、楽しそうに、そう言ったルイーズにまあいいけど、と溜息交じりに返す。カチャリと手元に視線を戻して、そのあとすぐにそうだ!と思いついたようにルイーズが言った。

「ねえ、ルキ。よかったら私にやり方教えてくれない?」

なんで僕が、と思ったけれど。教えるくらいなら簡単に出来るし時間もかからない。それに彼女ならばやり方さえ教えればすぐに身につくだろう。いいよ、と返してから手元に残った綺麗な布を一つ彼女の方に放り投げてから、『僕が教えるからには三日に一回はやりなよ』と返した。