みのり



空閑くんの試合を見てるときに戦闘心が揺さぶられるのはわたしが空閑くんと同じスコーピオンとグラスホッパーをセットしているから。彼の戦い方はユニークで、簡単には思いつかないような方法で勝利をもぎ取ってゆく。わたしより何歳も若いはずなのにすごいなあ。

『ねえ…』
「やめとけよ」
「ああ、無理だろう。中津には」
『まだなにも言ってないのに!』

空閑くんの試合を眺めているときに隣にいた荒船と穂刈に声をかけたら間をあけずそう返された。わたしの方を一切見ず画面から目をそらさずに。つらい。まあ言おうとしていたことは荒船の予想通りなのだが。空閑くんの戦い方は空閑くんにしかできないものだし真似なんてできっこないのだけれど、どうにかしてわたしも取り入れたいなあと思った。きっとわたし以外にもたくさんいるはず。この試合のあと模擬戦ブースに練習するひとがあふれ返ると思う。特にあのスコーピオンをブーメランっぽくするやつ、めちゃくちゃかっこいい。あれならわたしにもできそうだなあ。と思ったところでもう一度荒船に「やめておけよ」と念を押された。なんにも言ってないのに!