琴音×財前



今日のおやつはなににしようかなあと棚を開いたら何個か先日焼いた焼き菓子が入っていた。今の気分はほろほろのショートブレッドかドライフルーツがいっぱい散りばめられたパウンドケーキだけど、それらにはたくさんのバターとお砂糖が入ってて。おいしいものはもれなくカロリーがついてくる。ふたつとも先日焼いたばかりだから残ってはいるのだけれど、最近お家にいることが多いし運動もしてないからなあ…少しばかりお腹のお肉が気になってうーんとすこし考えこむ。結局なにも取らずに扉を閉じたら背後から「なあ、食べへんの?」と声をかけられた。
「わ、光くん。いつもそうやって音を立てずに近寄ってくるからびっくりしちゃう」
「別に忍び寄ったわけやないけど、俺に気づかんくらい琴音が考え込んでただけや」
そう言って光くんは手に持っていたマグカップをふたつキッチンに置いた。どうやら私がおやつを食べるものだと思い持ってきてくれたそうだ。ちゃっかりふたつあるとこが光くんらしいし内心くすりと笑ってしまう。見た目に反して甘いものが好きな彼は昔から私の作ったお菓子が好きだから。
「やめようかなて思ったけど、やっぱり食べる! パウンドケーキとショートブレッドどっちがいい? 飲み物はアールグレイにしようかなあ」
「どっちも」
「ふふっ、欲張りだなあ」
ダイエットは明日から。今日はふたりでお茶しよう。