みのり×荒船



「えっなんで荒船がここにいるの?」
「それはこっちの台詞だ」
ここは三門市にある映画館。ただの映画館ならば中津がいてもおかしくはないのだが、ここはそうではない。マイナーな映画を取り扱う3スクリーンほどの小型の映画館だ。普段ミニオンのような全年齢対象のキャラクターもの映画を好む中津には少々レベルの高い映画が多く、年齢制限の課せられたものの方が多いここに中津が来るはずがないのだ。それもひとりで。まあ、ポップコーンを片手に持ってるところから純粋に映画を見るためにきたのは間違いねえとは思うが。たまたま通りかかったわけではなさそうだ。
「見たい映画がここでしか上映してなくて!」
「ほう。てめーが見たいと思うようなのがここにあるとは思えねえが」
「えっどういう意味!?わたしだってたまには大人っぽいの見たいて思うよ!」
「どの映画だよ言ってみろ」
ちらりと上映スケジュールを眺めてもどれを見ても洋画で、中津が見たらすぐに寝たしまいそうなものばかりだった。中津は俺の問いに興奮気味に映画の半券を見せながら言った。
「いかレスラーだよ!」
「……聞こえなかったな、もう一度」
「いかレスラー」
まてなんだそれは、とツッコミが追いつかない。なんだよイカレスラーって。そもそもそのタイトルが大人向けの映画な訳がねえしなんでそれを見たいと思ったんだ。逆に俺が気になってきたわ。