ルキ×フィリーネ



訓練兵に入団したばかりの当初、一番難関だったのは対人訓練だった。二人組で行うため、普段誰とも連まず一人で行動している僕は案の定余り物だし、いざ探そうと思おうにもその頃にはほとんどペアが組み上がってる状態で。ま、普通はそうだよね、こんな対人訓練なんて仲のいい二人で組んでしまってて適当に流してしまえばいいんだから。なんで巨人殺しの兵になるために対人訓練なんてしなきゃいけないんだろうね。

『……また君余ってるの』
「あ…えっと、」
『…ルキだよ。いつになったら覚えるの、名前』

適当に教官の目を盗んでサボることもできたけど見つかったら面倒だし、と教官に見つからないように隠れながら探していれば、見つけた彼女はこれまで何回か一緒に組んだことがあった少女だった。名前はフィリーネ。大人しい少女で、僕と同じく一人で行動していることが多い彼女は人の名前を覚えることが苦手らしく、僕の顔を見て「緑髪の…」と小さな声で言う。だからルキだってば。

『…君はさ、どうして仲のいい友達を作ろうとしないの』
「え…」

適当に訓練を行いながら不意に聞いたそれは純粋な疑問だった。…まあ、僕が言うなって話だけどね。僕は寮じゃないしみんなと共に生活してるわけじゃないから一人でいたって不自由ないけど、ほら家に帰ったらユナもいるしね。  でも、君は違うでしょ。女の子っていうのは一人は心細いもんなんじゃないの?よくわかんないけど、104期の中にいる女性は必ず周りに誰かいるし、一人でいる女の人なんて君くらいだから。

「……こわいの」
『は?怖い?』

聞き返してみたけれど彼女はこくりと一回首を縦に振っただけでこれ以上は何も言わなかった。