きみだけが知らない



「荒船ってわたしのどこを好きになったの?」
お昼ご飯のきつねうどんを食べながら問いかけた。その瞬間、荒船がごほごほっと咽せる。
「突然なんだ」
「いや特に理由はないんだけど、なんか気になっちゃって……だってほらわたしって荒船の好みからかなり外れてそうだし……?」
むしろ正反対のような気がする。そう言えば荒船は怪訝そうに眉間に皺を寄せて、それからため息をひとつこぼした。
「……いつからそんなこと思っていた」
「え、うーん、いつからだろう。一年生の時から?少なくとも付き合う前なのは確かだよ」
イメージはわたしと正反対の大人しくて賢くて品のある大和撫子のような子、と説明をしてゆくうちに荒船は妙に納得したような表情に変わってゆく。そしてまたひとつ、先ほどよりも大きくため息をこぼした。
「ああ、そういうことかよ、なるほどな。だからあれだけ近くにいても好意に気づかないわけだ」
「行為?なにかしてたの?」
「……」
荒船の言葉を反芻し聞くも、ただ呆れた目線を送られるだけだった。なにゆえ!
「そもそもの話、俺の好みを知らないだろ。中津とそういう話をした記憶がない。その大和撫子ってやつもどこから出てきたんだ」
「荒船の彼女を想像したらわたしより先に大和撫子さんが浮かぶの。ロングヘアで、学年の高嶺の花ちゃん」
「どこの誰だよ。つか変なこと想像してんじゃねえ」
「えへ。でも、確かに荒船と恋バナしたことないね、一度くらい好きな人いるの?って聞けばよかった。1、2年生の頃とかさ」
「……好きなやつから直接それを聞かれてどう答えろって言うんだ」
「え?好きなやつって……」
あ、わたしのことか、とそこで初めて気づく。え、まって、ということは荒船はかなり前からわたしのことが好きだったということにならないか。荒船がいつからわたしのことを好きかなんて、そんなの知らないし、1年生の頃からってこと?
「え、え、そんな前から…?」
はくはくと口を開けたり閉じたりを繰り返しながら問いかける。そんなわたしを見て「ようやく気づいたか」と言いたげな表情を浮かべた荒船。
「少なくともこの数年はお前以外を好きになったことはねえな」
あまいあまい衝撃の事実を知って、顔が真っ赤になる。そんなわたしの姿に荒船は満足げに笑った。