美容師

私の担当の美容師は変わってる。
敬語を使わないのなんて当たり前。
毛先だけ揃えて欲しいと注文すれば、何故か仕上がったのはショートボブ。
流行りのカラーを注文すれば、仕上がったのは暗めのアッシュにポイントカラー。
ふざけるなと何度も文句を言いそうになったが、鏡を前にしていつも黙ってしまうのはソレが似合っているから。
SNSに載せれば沢山のいいねが付き、男女問わず好評なのだ。

お会計を済ませた後に渡されるポイントカードには、すでに次回の指定日が記載されてる。

「えっと、この日はちょっと…」

「なら前の週の水曜」

「あ、はい…」

彼の威圧的な態度にビビって、毎回こうして来てしまう。
そんな私達の関係も変わることなく、2年目に突入しようとしている。

「ねぇ、私の友達が荼毘くんにカットしてもらいたいって言ってるんだけど」

「へぇ、もの好きな奴だな」

「ダメ?」

「……どんな奴?」

「この子!」

そう言ってスマホの画像を差し出した。

「あー…無理。タイプじゃない」

「そっか…」

「俺好みの女しかやらない主義」

鏡越しに目が合えば、ニヤリと彼が笑った。
気まずくて咄嗟に俯けば、彼の両手が私の顔を上に傾けた。

「動くなって言ってるだろ」

再びハサミを動かす彼の表情はいつもと変わらず、自惚れしてしまったと恥ずかしくなった。

「なぁ、再来週火曜暇?」

「?暇だけどスパン短くない?」

「ココじゃねぇよ。デートしようぜ、デート」

固まる私を見て、珍しく彼が笑った。

「どんだけアンタにサービスしてきたと思ってんだよ。そろそろ見返り求めてもいいだろ?」

やっぱりさっきのは勘違いじゃなかった。
けど、デートなんて暫くしていないからどうしよう。

「当日のセットが心配なら前乗りで俺ん家来てもいいぜ」

なんて言うから、やっぱり彼の圧に負けてしまう。