治したい

「解け」

低く冷たい声に身体は強ばり、手足はジンジンと痺れている。
不器用に結ばれた縄は彼の腕と体を締め上げた。

「おい聞こえてんのか。解けよ」

震える唇からは上手く言葉が出てこなくて、その代わりに必死で首を横に振った。
彼と目を合わせようものなら、簡単にソレを解いてしまうだろう。
舌打ちが聞こえてきて、視界も歪んできてしまった。
勝手に震え出す腕を、必死で抑えつければ爪が食い込んだ。
痛くて痛くてどうしようもなかったが、彼の火傷に比べれば大した事ないと言い聞かせた。

小さく息を吐き彼の身体に両手を翳せばジュクジュクと焼け爛れた皮膚が、少し…ほんの少しだけ再生を始めた。
その間にも、他の皮膚はべろりと剥がれていく。

「ーっ、」

慌ててそちらを治療すれば、最初に施した部分が今度は剥がれる。
所詮、私の個性なんて一時的なもの。
数時間前の傷を治すことしか出来なければ、広範囲のものでも強力なものでも無いのだ。

次々に耐えきれなくなった皮膚が剥がれてきて、気づけば私が治療を施したところは残っていなかった。
パニックになりかけた情緒のせいで、個性が上手く発動されなかったのだ。
自分の未熟さと、目の前の彼の変わり果てた姿を見て遂に涙腺は崩壊した。
嗚咽混じりに泣き出した私を、ひたすらじっと見つめる彼。
拘束でもしないと触らせてくれさえしなかった彼が、大人しくなっていたのだ。
がっちりと結んだはずの縄はいつの間にかダランと垂れ下がり、拘束の意味を無くしていた。

「めんどくせぇ女」

彼から声がして顔を上げれば、呆れたような彼と目が合った。

「治すのか治さねぇのかどっち」

「…っ、治じだぃ、」

大きなため息を落とした後、私の腕を引き寄せた。

「あっそ、やりたきゃやれよ」

「ぅぅ…ぅん゙、まっででね゙」

涙も鼻水もダラダラの状態で、再び両手を翳せば彼が可笑しそうに笑った気がした。

「お前俺らが居なくなったらどーすんだよ。誰も庇ってやんねぇぞ」

「うぅ、その゙時は一緒に゙…」

「やだね。お前みたいな弱い奴と一生に地獄なんか御免だ」