通行人もヒーローも野良猫の一匹ですら通らない路地裏で、女は俺をひと目見ると言った。
「ねぇ、殺して?」
「……やだね。気味わりぃ女」
燃やす気にもなれなくて、踵を返して歩けばその女は後ろを着いてきた。
バッと振り向けば
「殺す気になった?」
なんて言うもんだから、拍子抜けして笑ってしまった。
そんな女は気付けば俺の隣にいるようになった。
ただ、今も昔も何も変わらないのは
「ねぇ、荼毘。いつになったら殺してくれるの?」
そこだけだ。
「よく飽きねぇな」
呆れたように笑えば、彼女は迷いもせず頷いた。
「命乞いしねぇ奴なんか殺しても楽しくねぇよ」
あっち行けよ、とシッシッと手の甲を振れば残念そうに彼女が部屋から出て行った。
「命乞いなんてされてもしねぇよ」
きっとそう言ったら彼女は心底悲しむだろう。