なんでラブホテルってどこも空調が悪いんだろう。
所々湿った部分に足先が当たれば、小さく声が出た。
申し訳程度に漂う生ぬるい空気に、しわくちゃになったシーツを手繰り寄せた。
それでも大した暖は取れなくて、近くに落ちていたシャツに手を伸ばす。
羽織るように肩に掛ければ、彼の匂いが鼻を掠めて肺いっぱいに吸い込んだ。
オレンジの中身は同じ空間にいるのに、なぜかもっとと欲しがる私は裾に腕を通した。
20センチ以上の身長差に袖はブカブカ、お尻まで隠れる裾。
「オレンジ似合うじゃん」
そう言って脱衣所から出てきたのは、ビール片手にボクサーパンツ一枚の彼。
遠くの方でお湯を貯める音がして、きっと寒がる私のためだと自惚れる。
「あと1時間、ちょいか…」
小さなサイドテーブルに置かれた、腕時計を手に取ると呟いた。
「…このあと何か予定でもあるの?」
「おいおい嘘だろ、ロン毛があんなに口うるさく言ってたのに。会議だよ」
「そーだったっけ。…え、私も?」
「当たり前」
しょうがないやつだな、とため息混じりにベッドの縁へと座った。
しょうがないよ。
頭ん中は貴方に抱かれたくて、それだけでいっぱいなんだから。
そう口に出すのは簡単だけど、簡単な女だとは思われたくない。
どうせならあなたを捨てるのは私の方でありたい、なんて意地っ張り。
「ほら、そんな寒そうにして風呂いこう」
「ん。入浴剤入れてくれた?」
「フロントに置いてあったやつ適当に」
「ありがと」
ベッドから飛び降りて、脱衣所へとぺたぺた歩いていく。
大きな鏡の前にきて、改めて自分の姿を見た。
「ねー、あつひろさん。今日これで行っちゃダメ?」
鏡越しの彼と目が合って、オレンジ色のシャツを指さした。
「だめ」
「えーなんで」
「なんでも。そんな格好してたら奴らにバレるだろ」
「いいじゃん別に。男ってこういうので周りに牽制するの好きでしょ?」
「よく知ってるじゃん。でもそんなの20代そこらのガキだろ。俺ぐらいになったら裏でコソコソやってる方がエロいってもんだよ」
私との関係隠したいってこと?なんて可愛くない台詞が出そうになって、唇を噤めば彼が笑った。
セックスの最中にぐしゃぐしゃになった髪ゴムを、痛くないように丁寧に解していく。
こんな所にまで気が利くなんて妬けてしまうじゃないか。
「それに」
「、それに?」
「そんな格好してたら会議どころじゃないって。俺の息子が暴走したらどうしてくれるんだよ」
「ふふふ。結局やたがりのガキじゃん」
「いや、お前笑ってるけどね。これでもおじさん必死だからね。死柄木に荼毘にスピナーに、」
「ないよ。私はあつひろさんだけだもん」
「へぇ。そりゃ嬉しいな」
そう言って彼が後ろから、ワイシャツのボタンに手をかける。
まるで焦らされているかのような指の動きが、一つ一つボタンを外していく。
はだけていく胸元に、彼の一部が当たれば声が漏れた。
とっくのとうに勃起した乳首が、シャツに擦れるのが気持ちよくて身をよじらせる。
「どうした?早く脱がないと」
「ん、っいじわ、る」
分からないフリして触れれば、じわりと熱くなっていく股間から先程までの液体が流れ出ていく。
「あつひろさん、だって、すご、いよ、?」
後ろ手に股間をまさぐれば、ボクサーパンツがピチピチに膨らんでいる。
ゴム辺りに指を引っ掛ければ、あっという間に彼のが顔を出した。
「っぁ……ね、1時間、はあるんだ よ、ね、?」
「いやいや。1時間しかねぇの間違いだろ?」