昨晩バーカウンターに立ったのは、黒霧さんではなくミスターだった。
何か飲みたいと言った私に、二つ返事でシェーカーを振り出した。
私をイメージしたカクテルなんて出されて、柄にもなくドキッとしてしまって
強いからゆっくり、なんて言われたけど、恥ずかしさを紛らわすようにグイグイ飲んじゃって
気付けばキスしてるし、グワングワンする視界の中で、暑そうに身ぐるみ履いだ彼の素顔だとか。
バーカウンターの上に寝そべった私に、背中痛くないかだなんて
うつろな意識の中でも優しい男を演じる人だな、と思った。
大事な部分をまさぐる手は全部右手だったし、さすが大人
あっという間にイカされて、我慢してたはずの潮だって派手にぶちまけてしまった。
酔うのも早くて、酔いが醒めるのも早い体質のせいか、大事なシーンは全部記憶にも体にも記憶されてしまっている。
連続2回もしてしまうなんてよっぽど溜まっていたんだろうとか、冷静になって考えてみる。
数日後、収集がかかったアジトにて呼び出した弔はご乱心だった。
また怒ってるの?なんて苦笑いしながら、荼毘とミスターの間から覗き込んでギョッとした。
テーブルや床に転がったグラスは割れ、所々に濡れた液体とティッシュの山。
「あれほど私用に使うなって言っただろ…!」
頭を抱えて怒り散らした弔を、宥めているのは黒霧さん。
「落ち着きなさい、死柄木弔」
「うるさい!大体なんだこの臭いは!!ここが濡れてるのはなんだんだよ気持ち悪い!ティッシュぐらい捨てろ!」
冷や汗が背中を伝い、フラッシュバックするのはあの夜のこと。
狂ったように口移しで飲まされた酒が、飲みきれなかった口の端から顎を伝って服も床も汚していく。
これでもかってほど、激しく掻き回されたソコから飛び散った液体。
終わったあとは早々に、酔っ払ったフリして逃げてきたのだから。
そう…全部私達のせいなのだ。
挙動不審な私に気付いた弔が、ギロリと睨んだ。
「なんだお前、なんか知ってるのかよ」
「ッ!……ぁ、ぃゃ……ひゃぁッ!!」
突然鷲掴みされたお尻に、変な声が出てしまった。
「どうした!?ウンコでも漏らしちゃったか!?」
「仁くんサイテーなのです」
「チッ…おいスピナー、掃除しとけよ」
「はぁ!?なんで俺が!」
ザワザワと騒ぎ出した仲間たちのおかげで、どうにか弔からの疑いの目を欺くことが出来たみたいだ。
ほっと息を吐いて落ち着こうにも、未だ尻は握られたまま。
「余計な事は言わないこと」
尻を鷲掴む張本人が、私をちらりと見てそう言った。
「ぅ、ぅん……じゃなくて、おし」
「どうした、変な声出して」
反対側から声がして振り向けば、ニヤついた顔の荼毘。
この男もこの男でなんともタイミングが悪い。
「あ、いや、えっと」
「随分とだらしねぇ声だったけどなァ?」
「〜っ!」
みるみるうちに赤くなっていく私を見て、随分と楽しそうに笑った荼毘。
そのやり取りを見ていただろうミスターが、尻を鷲津んだまま強引に引き寄せた。
「ンッぁ!」
「お前ねぇ、それは誘ってるようなもんだから」
表情は見えないが、声の雰囲気からして不機嫌になってしまっているらしい……が、まずはその手を離して欲しい。